「爆弾低気圧」の嵐

JR瀬戸大橋線の高架上で立ち往生する電車(HNKテレビ)

 

すさまじい春の嵐だった。会社から定時より早い帰宅を促されたので、午後3時半すぎの都営地下鉄大江戸線に乗ったが、既にラッシュ時並みの混雑。3.11の教訓が効いているのか、出足が早い。練馬のバス停もタクシー乗り場も長蛇の列。それでも強風が本格化する5時前には自宅に帰り着いた。

それからはテレビの前に座って気象情報に見入った。フジテレビの報道番組で、今日の嵐のことを「爆弾低気圧」と呼んでいた。聞き慣れないので、調べてみると、世界気象機関が認定している気象用語「bomb cyclone」の直訳。「爆弾」は戦争用語なので、気象庁は使用を控え、「急速に発達した低気圧」という表現に言い換えているという。

気象用語にもタブーがあることを図らずも知った。言い換えるほうが良い場合もないことはないが、言い換えることによって、実体が曖昧になることも少なくない。「急速に発達した低気圧」と「爆弾低気圧」ではインパクトが丸で違う。NHKは気象庁の指導に従って「急速に発達した低気圧」で通したと思われるが、ここはむしろフジが使った「爆弾低気圧」に軍配を上げたい。米東海岸、ニュージランド付近、日本付近でも頻繁に発生しているという。

7時間後に運転再開した快速電車(NHKテレビ)

 

時事ドットコムによると、低気圧は寒気と暖気が混じり合ってできる。今回は、大陸の寒気が日本付近に張り出す一方で、周囲より気圧が低い「気圧の谷」が日本海に入り込み、温帯低気圧となった。日本付近で発生する低気圧は通常、日本の東の海上。気象庁によれば、日本海での観測は珍しい。前回発生した1954年(昭和29)5月には北日本や近畿を中心に漁船遭難などで670人も死亡・行方不明になるなど大被害が出た。

今回発生した低気圧は、中心の気圧が24時間で38ヘクトパスカルも発達した。24ヘクトパスカル発達した低気圧を、「爆弾低気圧」と呼んでいる。確かに「急速に発達した低気圧」である。しかし、それでは記憶に残らない。

地震や原発事故でも、「国民への影響」を考慮して政府は発表や表現内容を抑制してばかり。しかし、それでは実態の深刻さがストレートに国民に伝わらない。深刻な事実から目を逸らすべきではないと思う。今回、カッコ付きながらも、「爆弾低気圧」が晴れて”解禁”されたことは3.11の教訓がここでも生きているのかもしれない。

全国各地で強風による被害が報告されており、午前零時になろうとする現在の東京でも、窓の外では強風が吹き止んでいない。文字通り、爆弾並みの破壊力を持った低気圧だった。

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