『不幸を選択したアメリカ』

 

書名:『不幸を選択したアメリカ』-オバマ大統領で世界はどうなる
著者:日高義樹(米ハドソン研究所首席研究員)
出版社:PHP研究所(2009年2月12日第1版第1刷発行)

日高義樹氏は元NHK記者。ワシントン支局長なども務めており、年配者にとっては氏の顔と名前はブラウン管を通じておなじみだろう。1992年にHNK退職後も米国に残り、保守系シンクタンク、ハドソン研究所の首席研究員を務める一方、全米商工会議所の会長首席顧問の肩書を持つ現役ジャーナリスト。

「私は1969年以来、40年にわたってワシントン、とくにホワイトハウスを見てきた」(本書あとがき)と書いているように、日米報道、とりわけ米国から見た日米関係では独自の視点を提供し続けている。これだけ長期間にわたって第一線で活躍しているジャーナリストも稀だ。

オバマ大統領(民主党)は2008年11月4日の大統領選挙で勝利し、09年1月20日に第44代米大統領に就任した。本書は選挙戦直後の12月に書かれた「オバマ本」だ。氏はこれまで、たくさんの著書を書いているが、オバマ政権に関するのはこれが最初。次が3月に読んだ『オバマ外交で沈没する日本』(2009年6月30日発行)。日高氏がオバマ民主党政権をどのように見ているかがよく分かる。発行後3年経っており、現時点からみて彼の見通しが正確だったのか、そうでなかったのかもよく分かる。

本書を読んでいると、日高氏の親米保守派ぶり、民主党批判が随所に出てくるが、いくらフリーのジャーナリストとはいえ、「よくそこまで言い切れるものだ」とびっくりすることがも多い。とにかく断言調で、歯切れが良いのだ。むしろ良過ぎて、本当に大丈夫かとさえ思ってしまう。それだけ、物事がよく見えているのならいいのだが、どんな人物でも、すべてを見通すのは不可能である以上、不安・不信を感じる。

同氏はあとがきで「アメリカの人々がオバマ大統領を選んだことは、不幸なアメリカと世界をつくりだす不幸な選択であったのではないかと私は恐れている。この私の予測が当たらないことを願いながら、筆を置く」と書いた。それから3年半。果たしてどうだったか。

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