とらや「夜の梅」

とにかく濃厚・濃密

 

とらやと言えば、羊羹だ。最中や焼き菓子、干菓子もあるが、羊羹だ。63年間の人生で食べたのは数えるほどしかない。よほどめでたいときくらいだ。自分で食べるために買うということはまずなく、買うときは大体が人様に差し上げるためだ。

いつぞや、会社の仕事上で失敗があって、先方に詫びを入れに行く際、これを手土産にしたことがあった。同僚3人が雁首揃えて大阪まで新幹線で日帰りしたことを思い出す。確か、そのときはとらやの羊羹を持参した。先方も羊羹をもらって嬉しいわけではないものの、「伝統と格式」を持ってきたこちら側の気持ちをそれなりに受け入れてくれる。そんな使われ方だ。

この日はいただき物だった。「『夜の梅』は、羊羹の切り口の小豆が、夜の闇にほの白く咲く梅を表すことから付けられました。元禄7年 (1694) に初めて記録の出てくる古い菓銘で、羊羹としては文政2年 (1819) の記録が最初のものです。大正12年 (1923) には商標登録を済ませ、今日ではとらやを代表する商品となっています」(同社HP)。

とにかく保存性が優れている。賞味期限が製造から1年で、賞味期限後さらに1年間もおいしく食べられることを保証している。常温で、長期保存が可能な保存食品はそんなにないような気がする。災害対策用保存食としても使えるような気がする。

株式会社虎屋(本社東京都港区赤坂)は創業が室町時代後期(1520年代)というから気が遠くなるほどの昔だ。京都御所の御用を勤めていた、という。あまりに昔のことだし、ときの権力者の庇護を受けた御用商人だと一蹴するにしても、歴史の重みは消えないし、伝統に裏打ちされた商品の存在は尊重しなければなるまい。

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