試写会『南の島の大統領-沈みゆくモルディブ-』

「モルディブを絶対沈めない」

「モルディブを絶対沈めない」

 

試写会:『南の島の大統領-沈みゆくモルディブ-』
監督・撮影:ジョン・シェンク
2011年/アメリカ/101分/ドキュメンタリー
2013年7月23日@日本記者クラブ

 

◎「沈みゆくモルディブ」に明日はあるか

◆1メートルの海面上昇で80%の国土消失
インド洋に浮かぶモルディブ共和国。光り輝くミントブルーの海に1200のサンゴ礁の島々が散らばり、引き潮のときのみ現れる砂州などを含めると、その数は2000にも上る。インドの南西340キロ地点から赤道をまたぐ750キロ地点まで、ネックレス状に分布する「地上の楽園」を訪れる観光客は今や中国がダントツの1位だ。

しかし、同国の直面する現実は過酷だ。地球上で最も低い国土の平均海抜高度は1.5メートル。最も高い地点でも2.5メートル。海抜1メートル未満が全体の80%を占め、2050年から2100年の間に水没する危機に直面している。

◆長期独裁崩壊、民主化で新大統領誕生
1965年に英国保護領から独立したイスラム国家を世界有数のリゾート地に育て上げたのは30年間にわたって同国を支配したガユーム独裁政権。民主化運動を抑圧し、反対勢力を観光客には立ち入りの禁止されている監獄島に拘置した。ガユーム大統領は国内外の民主化圧力を受け、2008年には同国初の複数政党制による大統領選挙実施に追い込まれ、退陣を余儀なくされた。

新大統領に選ばれたのがドキュメンタリー映画『南の島の大統領-沈みゆくモルディブ-』(ジョン・シェンク監督・撮影、2011年アメリカ、8月10日日本公開予定)で描かれたモハメド・ナシード新大統領(当時41歳)だった。映画は新大統領の就任1年目の「モルディブを絶対沈めない」奮闘を描く。

◆中国との結び付きを強化
ハイライトは2009年12月の第15回気候変動枠組条約締結国会議(COP15,コペンハーゲン)。温室効果ガスの排出規制に関する合意を取り付けるため、世界の大国に臆することなく型破りのロビー外交を展開。最終的に排出大国の中国、インド、米国から初めて二酸化炭素排出削減公約を引き出すことに成功した。大国の思惑を反映した合意だが、ナシード大統領にとっても大きな勝利だった。映画はそこで終わっている。

ナシード氏は昨年2月、ガユーム派のクーデターで辞任。現在はワヒード前副大統領が大統領を務める。目下の焦点は9月7日実施の大統領選挙でナシード氏がカムバックするかどうか。地球温暖化との闘いの最前線に立ち、シーレーンの要衝をも占めるモルディブはこのところ、関係の深かったインドより、中国との政治的、経済的結び付きを強めている。日本にとっても気になる存在だ。(時事通信社『コメントライナー』20013年8月2日号から転載)

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