「安全を目指すのは不遜か?」

会見する松浦JAEA理事長

会見する松浦JAEA理事長

 

テーマ:JAEA改革-来し方、そして明日-
会見者:松浦祥次郞日本原子力研究開発機構(JAEA)理事長
2013年8月28日@日本記者クラブ

JAEAは、原子力基本法に基づくわが国唯一の原子力研究開発機関。文科省所管の独立行政法人で、技術者集団だ。2005年に核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所が統合して設立された。高速増殖炉「もんじゅ」や核融合、放射性廃棄物処分などを研究。本部は茨城県東海村。職員数約4000人。

松浦理事長は6月3日に就任。原子力安全委員長を務めた原子力業界の大御所だ。松浦理事長は軽水炉畑を歩んできた自分が理事長を受けたことについて、日本原子力研究所に育てられたことに恩義を感じているとの消極的理由と、原子力の可能性への挑戦という積極的理由を挙げた。

JAEAは現在、「もんじゅ」の施設点検漏れ、J-PARK(サテライト型加速器)放射能漏れ事故などを受け、文科省から改革断行を迫られている組織。8月8日にまとめられた中間取りまとめでは業務の解体・分離を求められた。

原子力開発のリスクは科学技術的なリスクもさることながら、一般市民の理解しにくい社会的リスクのレベルが極めて大きいことに格段の配慮が必要だ。社会的側面に対するJAEA側の努力が全く足りないことが問題の解決を複雑にしている。

松浦理事長は原子力事業の有するリスクに対するJAEAの感覚を鋭く磨き、原子力安全文化の価値を理解した上で、原子力事業を推進する「完全性」を目指す熱意と覚悟を語った。

核燃料サイクル関連事業の実施を日本が国際的に認められていることが重要な国家的資源であることは理解できる。核燃料サイクル事業を完結し、実用化に向けた準備を最小限でも継続することの重要性も分かる。

「もんじゅ」計画の中止・放棄が軽水炉利用の継続に大きな影響をもたらす恐れがあることもうなずける。福島原子炉の廃炉・解体、高レベル放射性物質処理にJAEAの果たす役割も必要だ。それに取り組む松浦理事長の熱意と覚悟に嘘はないだろう。

問題は個人の熱意や覚悟のレベルではなく、組織やそれに根付く文化に問題があるのではないか。核燃料サイクルに取り組む管理運営能力やリスク管理能力に根本的な欠陥があるのではないか。そう思わざるを得ない。

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