ウスターソースも奥が深い
ざっとこんな感じで全国のソースの一部が集まっていた
農水省北別館の日豊庵で野菜炒めそばを食べた際、近くの「消費者の部屋」で「ソースの展示」をやっていた。大のソース党としては見逃すことのできない展示だった。１１月７日はソースの日だとか。
個人的に好きなのはウスターソース。もらった日本ソース工業会の資料によれば、「野菜や果実のパルプ質を製造工程中で濾過しているため、粘度が低く、さらりとした辛口ソース。しっかりとした味が特徴なので隠し味にも使え、料理に風味を加えることができる」という。
ウスターソースは英ウスター市のある家庭で起こった偶然の出来事がきっかけで誕生したという。１９世紀の初め、市内に住む主婦が余った野菜や果実の切れ端を有効利用しようと香辛料を振り掛けて壺に入れ、腐敗しないように塩や酢を加えて貯蔵していたら、長い時間のうちに熟成し、肉や魚、野菜にも合う液体ソースになっていたのだ。これがウスターソースの起源だ。
英国ではウスター市のリー・ペリン社（LEA&PERRINS）が企業としてウスターソースを商品化し、その名を世界に広めたとされているが、同社が商品化したのは市内で薬局を共同経営していたジョン・リー氏とウイリアム・ペリンス氏。インド・ベンガル州総督から持ち込まれたヒンドゥー料理用レシピを下に開発した新しいタイプのソースらしい。
そう言えば、英国滞在中にWorcestershire sourceを買って食べたことがあるが、日本でなじんでいたウスターソースとはかなり味が違ったことを覚えている。
日本ソース工業会やウィキペディアなどによると、日本でもヤマサ醤油が１８８７年、「新味醤油」の商標でウスターソースを製造販売した。しかし、日本人の口に合わないため１年ほどで製造中止。その後も、日本人の口に合うソース作りの努力は続けられ、阪神ソース（１８９６）、三ツ矢ソース（１８９４）、イカリソース（１８９６）が世に出た。
関東では１９０５年に「犬印ソース」（現ブルドックソース）、１９０８年に中部地方で「カゴメソース」が発売された。日本のウスターソースは、食の欧米化とともに、家庭の食卓に定着していったようだ。
醤油との比較で言えば、何が最大の売りかと聞いたら、「何と言ってもノンオイルでヘルシー」との答えが返ってきた。本日も明日も食卓に欠かせないウスターソースだが、我が家で目玉焼きなどにソースを掛けるのは私と息子だけ。他は圧倒的に醤油が多く、完全に少数派だ。
オリソース／オジカソース
オジカソース工業（京都市山科区）は大正７年（１９１８）創業の京都初めてのソース製造メーカー。「無添加ウスターソース」が定番商品だが、ウスターソースの熟成時に沈殿するドロッとした「澱（おり）」を主原料とした「Blackオリソース」もいけるらしい。神戸ではドロソースと呼ばれていた。明治屋でも売っているらしい。
ツクバネソース／東村山ソース
ツクバネソースはツクバネ食品工業（東京都台東区）のウスターソース。同社は１９４９年創業。もともとソース屋からスタートしたが、今ではにんにく、メンマ、ザーサイなども作っている。「東村山黒焼きそばソース」を作っているのはポールスタア（東京都東村山市）。イカ墨・黒酒などを使用。ウィキペディアによれば、「デニーズ」やスエヒロで使われているソースは同社製だとか。
長崎生まれの金蝶ソース
チョーコー醤油（長崎市）が作るウスターソースが「金蝶ソース」。皿うどんにかけるのはこのソースだという。
富士宮やきそばソース／ワサビ印ウスターソース
こしの強い専用麺を使用し、肉かすを混ぜ、サバやイワシの削り粉を振り掛けるのが特徴の富士宮やきそば。いろんな専用ソースがあり、展示されていたのは鈴勝製。
カープお好みソース
毛利醸造（広島県三次市）が製造・販売している「カープソース」はお好みソースとやきそばソースの２種類。カープソースと言えば、普通「お好みソース」を指すという。明治２年（１８６９）創業の老舗だ。
とにかく、ソースも奥が深い。「ソースの日」に敬意を表してソースについてしっかり考えてみた。
