『里山資本主義』

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書名:『里山資本主義』-日本経済は「安心の原理」で動く-
著者:藻谷浩介(日本総合研究所調査部主席研究員)
NHK広島取材班
出版社:角川書店(角川ONEテーマ21)

 

2008年秋のリーマンショックで世界が陥った経済危機の本質を取材し、NHKスペシャル番組『マネー資本主義』を作ったNHKのテレビマン氏が広島放送局に転勤になって、中国山地のあちこちで始まっている自然主義的な実践・挑戦を『里山資本主義』と捉えて提唱したものだ。

マネー最優先主義に毒された都会人が地方に住むことになって、アンチー・マネーに目覚めていく姿を浮き彫りにしただけで、別段「里山資本主義」などと仰々しく命名するのはちゃんちゃらおかしいと切り捨てれば身も蓋もないが、「里山資本主義」という概念を示した提案力には敬意を表したい。

■「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。お金が乏しくなっても水と食料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、あらかじめ用意しておこうという実践だ(121p)。

■われわれの考える「里山資本主義」の最初の動機はリスクヘッジかもしれない。しかし実践が深まれば、お金で済ませてきたことの相当部分を、お金をかけずに行っていくことも可能になってくる。生活が二刀流になってくるのだ(138p)。

■「都会のスマートシティー」と「地方の里山資本主義」が車の両輪になる。これからの日本に必要なのは、この両方ではないだろうか。都会の活気と喧噪の中で、都会らしい21世紀型のしなやかな文明を開拓し、ビジネスにもつなげて、世界と戦おうという道。鳥がさえずる地方の穏やかな環境で、お年寄りや子どもにやさしいもうひとつの文明の形をつくりあげて、都会を下支えする後背地を保っていく道(248p)

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