宝塚歌劇に次の100年はあるか
一般財団法人デジタル文化財創出機構主催の『響夜学~経営と文化のいい関係を考える~』会合が日比谷文化図書館で開催された。この日は3回目で、阪急電鉄歌劇事業部長兼東京総支配人の久保孝満氏が「宝塚歌劇100年」について語った。
2014年4月1日に第1回公演を行った宝塚歌劇団はまもなく100周年を迎える。「100年も続いたのも奇跡」だが、気になるのは果たして「次の100年」はあるのかだ。
「あれは女・子どもの見るもの」と馬鹿にしてはいけないらしい。宝塚にはまったという初老の男性によれば、「最近は男性客も多いという。それも年寄りだけではなく、若者の姿もよく見掛ける。幕間に30分ある休憩のときは男たちがウロウロしているんです」という。
同氏が指摘するのは、「宝塚は一級の芸術ではないかもしれないが、3500円のB席で、あれだけのエンターテインメント(芝居+レビュー)は見られない」とコストパフォーマンスのすばらしさ。頭から「あんなもの」と馬鹿にしていた者にとっては「目からうろこ」だった。
田舎電車の箕面有馬電気軌道(現阪急電鉄)の客集めのために、実業家・小林一三が思い付いた宝塚少女歌劇が100年も続いたのは音楽学校での人材育成と興行をリンクさせ、トップスターの育成・誕生・卒業のプロセスを興行を通じてオープンにし、観客をそれに参加させるビジネスモデルを生みだしたためだ。それが長期的、継続的な集客を可能にした。
問題はこれまでのビジネスモデルで、これからの100年を乗り切っていけるかどうかだ。「損益分岐点は常に70%を目安に経営を進めている。収益が取れないと経営を継続できない。収益の取れない事業は道楽」と久保氏は言った。
ただ、東京宝塚劇場こそ客席稼働率100%を維持しているものの、本拠地の宝塚大劇場は86%台に低下しているのも事実だ。少子高齢化もあって、このレベルをこの先もずっと維持できるかどうかは不透明だ。
気になるのは人材が国境を越えて流動化するなど世界がグローバル化していることだ。そうした中で、宝塚もスポット的なものではなく、本格的な海外公演に取り組む時期にきている。
3月1日付で阪急電鉄の新社長に就任する中川喜博専務は産経新聞のインタビューに対し、2015年にも東南アジア興行を実現する方針を表明している(2013年12月6日)。
今や交響楽団やバレー団も世界から人材を受け入れ、技術レベルの向上に向けしのぎを削っているグローバル時代だ。閉じられた世界でガラパゴス化するからこそ「宝塚文化」だとも思うものの、グローバル化の潮流が逆流することは考えられないような気がしてならない。