歴史人口学の視点

会見する鬼頭宏上智大学教授

会見する鬼頭宏上智大学教授

 

テーマ:人口減少問題:歴史人口学の視点~新しい社会デザインの構築を目指して~
会見者:鬼頭宏上智大学教授
2014年7月3日@日本記者クラブ

■歴史人口学は人口の歴史的な変遷を研究する学問。1973年に思いついて、80年に論文を書いた。その後30~40年間進歩がない。

■少子化は過去40年続いている。日本が特別なわけではない。どこの国も豊かになれば、出生率は落ちている。人口が増えていた1974年の『人口白書』は、人口爆発による資源不足と環境問題を背景に、増減のない「静止人口」の実現を国家目標にした。その時点で2010年以降は減少に転じると予想していた。今は皮肉にもそれが実現した格好だ。しかし、減少対策を考えてこなかった。

■日本の人口はずっと増え続けてきたわけではなく、増減を繰り返してきた。過去1万年間では今回が4回目の停滞期。1回目は縄文時代。中期の26万人から晩期には3分の1の8万人に減った。2回目は平安中期の700万人をピークに減少期に。3回目は江戸中期。3200万人から末期は3000万人を割り込んだ。今回は4回目だ。

■減少要因は縄文が寒冷化による食料減、平安期は荘園制の拡大で土地開発や農業生産の減少、江戸時代は飢饉と出産抑制、豊かさ実現による出生率低下。人口は文明と密接な関係がある。

■少子化対策は出生率を上げるだけではなく、社会の仕組みを転換していく必要がある。それも国の形を変えるくらいの意気込みで。

■人口の適正規模というものはない。政府は1億人を維持する方針を打ち出したが、1億人という水準に意味はない。1億人にこだわる必要はない。人口減少を止めなければならない。静止させることが重要だ。それに合わせた国造りを行う。

■日本は18世紀から1960年ごろまでは皆婚傾向が強い国だった。それが多様なライフスタイルを踏まえ、変わってきた。

■フランスや北欧などは婚外子の浸透や移民の受け入れで人口減に対応しているが、そうした概念を日本人は意識として受け入れられないだろう。日本は大きく変われないと思われている。

■東京への一極集中は悩ましい問題だ。地域の人口は増やせる可能性がある。江戸時代の後半は地方が活性化していた。地方人口の減少は端的には働き場がないためなので、資源を使って切り開いていくしかない。地方でなければできないことをやる。東京の魅力に対抗できる魅力を地方は持たなければならない。教育機会と芸術文化の魅力だ。それを作るしかない。

■「悲観は気分に属し、楽観は意思に属する」(アラン)。心理学者とジャーナリズムに力を奮ってほしい。

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