TPP交渉決裂の真相

 

会見する鈴木宣弘氏

 

ゲスト:鈴木宣弘東大大学院教授
テーマ:TPP①
2015年8月19日@日本記者クラブ

鈴木宣弘(のぶひろ)氏は1958年三重県生まれ。東大農学部卒業後、農水省に入った農水官僚。農水省には15年いて退職。九州大学教授を経て、2006年から東大教授。元農水官僚は今やばりばりの環太平洋経済連携協定(TPP)反対の急先鋒だ。この日はTPP反対の立場から7月末のハワイTPP閣僚会議決裂の真相を語った。

この日の会見について、レコードチャイナに、論評無しのストレートニュースとして書いた。

鈴木教授は質疑の中で、米国の意向に日本が沿う形で物事を進める姿勢においては安保法制とTPPは全く同じであるとし、「米国には思考停止的に追随する一方、中国や韓国に対しては逆に何も考えずに対抗的な姿勢を取っている」とし、「こんなことをやっていると、アメリカが『もう日本はいいよ』と言った場合、日本だけが孤立してしまう」と指摘した。

その上で、「もう少し、世界の中で日本がどういう立ち位置で、どういう国と、どういう関係を持っていくかを自主的に戦略を持った上で対応していかないと危機的な状況になれば、日本の国民にとって不都合な状況が生じてくる」と警告した。

そう言えば、鈴木教授が東大農学部の「日本農業を考える」公開セミナー(2012年11月10日)で同じ学部の本間正義教授と論争したことを思い出した。鈴木氏が「TPPで崩壊する」、本間教授は「TPPで再生する」と真っ向から対決した。東大もなかなか面白いことをやるものだと思った。

TPP交渉は「足踏み」か「漂流」かの瀬戸際に来ているようだ。日本でもそれなりにもめたが、今ではすっかりもう議論的には”決着”が付いて「TPP合意は既定事実化」しているのは鈴木教授の指摘通り。

アメリカは何でもめているのだろうとぼけっと見ているだけだ。今回の大筋合意を阻んだニュージーランドの行動についても「小国の乱」との受け止めにとどまっている。

TPPの本質を理解しないことが日本人にとってどれだけ「不都合な真実」をもたらすものなのか。想像力をもっと、もっと発揮しなければならないことだけは確かだ。

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