『かさぶた 福島The Silent Views』

 

見えない放射能災害を記録し続ける写真家の中筋純氏が会見する

見えない放射能災害を記録し続ける写真家の中筋純氏が会見した

 

ゲスト:写真家 中筋純氏(なかすじ・じゅん)
テーマ:3.11から5年
2016年2月22日@日本記者クラブ

 

中筋純氏は2007年からチェルノブイリ原子力発電所の事故(1986年4月26日)現場周辺で写真を撮り続けている。撮った写真を日本全国各地を巡回し写真展を開いている。パノラマ写真を説明しながら、「4キロ離れたプリピアチの団地で16階建ての屋上から見ると、紅葉した木々が広がり、その奥にチェルノブイリの石棺が見える。自然に飲み込まれる難破船のように見える」と話す。

3.11の時はチェルノブイリ25周年写真展の準備をしていた。すぐに福島に向かったわけではない。「福島はどう追いかけていいのか分からなかった。直後は福島ではなく、チェルノブイリに足が向かった」という。

福島への取材を始めたのは2013年、東京五輪の開催が決まったのがきっかけ。「これで流れが変わると思った。福島の忘却が始まると思った」。浪江町に企画書を出し、「公益」目的の一時立ち入りパスを発行してもらった。それで撮影が可能になった。

 

浪江町内のJR常磐線を覆い尽くすセンニンソウ(表紙写真)

浪江町内のJR常磐線を覆い尽くすセンニンソウ(表紙写真)

 

「人の気配が消え去りしばらくすると、それを察知していたかのように植物の萌芽がみられる。

春 アスファルトを割るヨモギ、
夏 路地という路地、壁という壁 藤や葛の千手の蔓這い回り 街は緑の波に飲み込まれる。
秋 穂を揺らすススキやエノコログサにテッポウユリが子どものいなくなったグラウンドを覆い
冬 枯れ草が覆う中 ニワタバコの葉が春を待ち地面を這う

溢れ出す野性は、人間の営みや、記憶に全く無関心だ。あの日の津波が色を変えてまた、ふたたび襲ってくるのか?

自然の暴力を感じるものの 緑にはその意識はなく、かえってやさしく忌地(いやじ)と化した地球上の傷を癒やす幾重もの「かさぶた」となる。

中筋氏は2月末、福島の写真集『かさぶた 福島The Silent View』を東邦出版から出版した。5年間の時間の経過の中で、まるで地球が自らを癒やすかのように福島の傷跡を「かさぶた」のように覆い隠そうとしている姿を見事に記録している。こういう仕事は重要だ。

全国で写真展巡回中(チラシ)。

 

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