「働き方のアップデートを発信したい」

 

登壇した宮坂学ヤフー社長

ゲスト:宮坂学ヤフー社長
テーマ:チェンジメーカーズに聞く(18)
2017年3月10日(金)

IT企業と言えば、”ブラック企業”が当たり前だが、登壇したヤフーはどうもそうではないようだ。宮坂社長は1967年生まれ、91年同志社大学卒。ベンチャー企業に就職したのち97年にヤフーに転職。2009年執行役員、12年に社長就任。13年からはソフトバンクの取締役も兼任している。

宮坂社長は会見で、「働き方のアップデートの発信地にしたい」と繰り返した。それがヤフーのビジョンであり、疲れ切っている日本人の働き方をテクノロジーで解決し、それが生産性の向上にもつながると信じている。

それが連絡が付けば普段とは異なる好きな場所で働くことができる「どこでもオフィス」(2014年4月~)であり、週休3日制の導入の検討を始めた。17年4月からは育児、看護、介護などを行う社員を対象に、希望者には選択肢として提供する予定だ。

昨年10月からは新卒一括採用を廃止し、30歳以下であれば誰でも応募できる「ポテンシャル採用」を新設し、通年採用を開始。1996年創業時から事前に申請すれば副業を認めている。

社員の心と体の健康増進を推進するため「チーフ・コンディショニング・オフィサー」(CCO)を新設し、朝食の無料提供も開始。16年10月の新本社移転後、社員食堂で注文したメニューやカロリーを社員専用Webサイトから閲覧可能にした。

また、「テクノロジーによる」働き方の変革では昨年10月から社員の新幹線通勤を解禁した。満員電車に揺られるより、はるかにストレスは低い。実際に軽井沢から新幹線で通う取締役もいるという。パソコンがあれば、座れさえすれば、通勤時間も貴重な労働時間に変えられる。

根底にあるのが、職場は、本社というリアルな場所ではなくクラウド上にある、という考え方。だから、時間にも場所にも縛られない。

背景には、日本の労働者の生産性に対する危機感がある。人口の約半分が雇われ、その3割が疲れ果てている。労働時間の損失は大きい。宮坂社長は「これで景気が良くなるはずがない。労働者の心身状態の改善も、企業の役割ではないか」と話す。

現実には課題も多い。オフィスのクラウド化にはセキュリティーのコストがかかる。評価は適正にできるのか。みなが時間も場所も自由なら、どう突発事態に対応するのか。いつでも・どこでも働けると逆に、休日や時間外労働が増えるのではないか。働く場所を自由にした一方、週に1度の部下との個人面談を課された管理職は、負担が増しているはずだ。

宮坂社長自身、ものすごいブラック企業で、過酷労働を経験してきた。それが当たり前だった。しかし、そこを抜けた。抜けた世界はさぞかし快適だろう。ただ、それをできるかどうかは稼がなければならない。人の喜ぶ顔を見るのは楽ではない。

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