「希望を持てないことが不満ではない」開沼博氏

 

開沼博教授

 

ゲスト:開沼博(かいぬま・ひろし)立命館大学衣笠総合研究機構准教授
テーマ:2019年参院選後の日本 民意を読む
2019年8月19日@日本記者クラブ

 

社会学者である開沼博氏が参院選後の日本の民意を社会学のアプローチで分析した。

・エネルギーに対しては強い意志があるというよりも極力触れないでおこう。触れればどちらにせよ損するリスクがある。棚上げにしようという意思を感じる。米軍基地、沖縄問題にも通じる。分からない、ぼやっとしているのが現状だ。

・2013年9月に日本記者クラブで話をした。12年7月に官邸前デモですごいことが起こっていた。1968年以来。同年9月くらいまでは脱原発のうねりが起こった。同年12月に選挙があった。自民党がぼろ勝ちした。社会が変わる熱狂は雲散霧消。逆ブレの傾向が起こっている。

・空白の3カ月に何があったか。これを直視し、きちんと総括しないと革新への熱狂と逆ブレが起こる。独裁・恐怖政治がやってくる。2012年7~9月。

・そして今、安倍晋三政権は戦後一番長い政権である。なぜか。

・2012年12月の選挙以降、自公が常に勝利。前提条件は変わるのに同様の結果。ポピュリズム的な政治運動が始まっていったのが12年12月。「未来の党」(代表・阿部知子衆議院議員)があったが、惨敗しあっという間になくなる。民主党も下野する流れに。

・13年は落選したものの、山本太郎が出てきた。14年は細川・小泉連合が都知事選で脱原発を訴えた。福島原発関係で『美味しんぼう』バッシングがあったり、朝日新聞誤報事件などがあり、熱狂が過ぎたぞ。

・「そもそも選挙の報道がめちゃめちゃ少ないじゃないか」(白井聡)。ここらへんから始まっている。自分たち自身で煽ったり、他方では旧来型のマスメディアが大人しくさせられる流れができてきた。

・3年前の都知事選では小池百合子が増田寛也、鳥越俊太郎に勝利。この当たりから原発でも安保法制でもなく、何をやろうか。モリカケ問題。築地移転。メディアイベントとしては盛り上がったが、地方の政策とどうつながっているのか。有権者は取り残された感じ。

・アジェンダセッテイングが喪失されているのではないか。疑似アジェンダセッテイングではないか。17年には希望の党の腰砕けがあった。「未来・希望」の喪失から「いまの絶望」へ。

・未来が見えない。そういう中で希望も持てない。

・希望を持てないことが不満につながるか。必ずしもそうではない。未来の期待値を持たないから、それが奪われるというあせりもない。意外とそこで満足する。『絶望の国の幸福な若者たち』(社会学者の古市憲寿=ふるいちのりとし氏)。

・結構な人が未来に絶望しつつなぜか満足してしまうところがある。何となくみんな安定志向で足りない部分を持ちながらも、そこにとどまり、現政権が支持される。

 

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