【山梨ドライブ】最後に「勝沼醸造」と「菱山中央醸造」で「試飲」にありついた勝沼ワイナリー巡り

 

泊まった甲州市営施設「勝沼ぶどうの丘」の地下にあるワインカーヴ

 

■目当ては「ぶどう」より「花桃」だった

 

花桃観賞とワイン利き酒を目的に東京と名古屋から2組の老夫婦がぶどう産地の山梨県甲州市に集まった。名古屋の友人は手頃な値段のワインを買って自宅で夜ごとワイングラスを傾けるのが趣味で、ワインを調達するため山梨に行きたいという。

東京で巣ごもりしていたわれわれも花桃を観賞したいと思っていた矢先だったので、4月1,2,3の3日間、名古屋組の提案に乗ることにした。現地集合したのは甲州市営施設「勝沼ぶどうの丘」(甲州市勝沼町菱山)。

地下にワインカーブを備えた「ホテル」(洋室13部屋、和室8部屋、全室温泉付き)を中心にバーベキューガーデンや展望レストランのほか、眼下になだらかに広がる甲府盆地と、雄大に連なる南アルプス連山の眺望を楽しめるぶどうの丘温泉「天空の湯」もある。

勝沼は会社時代に部の旅行で一度来たことがある。そのときは「ぶどう狩り」が目的だった。勝沼のぶどうはせいぜい集客狙いのぶどう狩りの対象でしかなく、今回のようにワイナリーを見学したことはない。ワイナリー自体もそんなに多くはなかった気がする。

どちらかというと、みんなで電車に乗ってわっときてそのままさっと引き上げる日帰り旅行だった。せいぜい1泊しても夜は宴会で、今のようにゆっくりとワインを楽しみながらワイナリー巡りをするなんてことはなかった。

山梨のぶどうはかつてそれほど評価は高くなく、むしろ桃のほうが価値も高かった。ぶどうと桃はともに夏が旬。関西の実家に夏帰る際は中央道を走り、桃を買った。10年ほど前に車一杯に桃を買い込み、気温上昇に伴い”熟成”が進み、車の中ですっかり酔ってしまったことを覚えている。

 

 

 

 

■試飲にはそれなりのマナーも必要

 

ホテルへのチェックインは午後3時。チェックインを済ませて早速ワインカーブ(地下ワイン貯蔵庫)を試した。そこには甲州市推奨の約2000銘柄・約2万本のワインが揃っているという。

まずフロントで専用の試飲容器タートヴァン(有料:1520円)を購入しなければならない。このタートヴァンは持ち帰ってもOK。地下はやはりワインに適した温度に保たれていて冷たく、寒かった。ワインの季節は秋で、春の人出はそんなでもなかった。

白、ロゼ、赤など180種類がワインを試飲できた。あまりにも多くありすぎて迷った。容器に注いでもすべての量を飲めばよいわけではない。アルコールにあまり強くない人は吐器に捨てながら自分自身をコントロールすることも許される。そのために吐器も用意されている。

もちろん試飲=「飲み放題の居酒屋」ではない。ワインの評価は色合い、香り、味わい、余韻など様々な要素を感じ取る必要があり、体のコンディションが重要だ。視覚(目)、嗅覚(鼻)、味覚(口・のど)を最良の状態にしておく必要もある。

さらに香水やコロンなど香りを発するものを身に付けていると、香りの評価に影響が出てしまう。他人の迷惑も考えて匂いには敏感になっておく必要もありそうだ。

いろいろ試したが、最後は味がよく分からなかった。赤ワインの場合、果皮と果実、種子が一緒に醸されるため、ブドウ由来のタンニンがワイン中に移行し、渋みを感じる。ワイン試飲もスパークリング⇒白ワイン⇒赤ワインの順が普通とされている。

 

試飲のために「勝沼ぶどうの丘」から徒歩で歩く

 

まだまだ歩く

 

さらに歩くと、「剪定作業中」だった

 

■コロナ対策でどこも試飲は中止中

 

勝沼地区にあるワイナリーは大小さまざま28社(ほかに一般受付していないワイナリーが2社)。塩山地区にも7社あり、甲州市全体では35社ある。

いさんで試飲に向かったが、大敵がいた。新型コロナウイルス感染症である。コロナ対策のために現在試飲を中止中のところが多いのだ。ほとんどが駄目だった。

大手の盛田甲州ワイナリーも駄目だったほか、比較的まだ新しい工場感のある「MGVsワイナリー」(マグヴィスワイナリー)も無理だった。「現在コロナウイルス感染症予防のため、見学もご遠慮しただいている」という。

 

これが「グレイス甲州2019」

 

■「グレイス甲州2019年」で世界に

 

名古屋のコレクター夫婦が一番行きたがっていた「中央葡萄酒グレースワイン」も試飲はできなかった。ただ買う銘柄を決めていたらしく、特定の甲州を購入した。

品種:甲州(山梨固有のぶどう)
味わい:辛口(Dry)
産地:山梨県甲州市勝沼町
土壌:粘土質
栽培方法:棚式
収穫日:2019年9月30日~10月25日
醸造法:ステンレスタンク発酵、貯蔵
アルコール:11.8%

世界はおろか、日本国内でもあまり注目されてこなかった山梨固有のぶどう「甲州」だが、2014年、「甲州」を使ったワインが世界最大のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・アワード」で金賞を受賞したことで火が付いた。

日本初の栄誉を獲得したのは1923年創業の中央葡萄酒だった。それで一躍脚光を浴びているのが4代目社長の娘で、栽培醸造責任者を務める三澤彩奈氏だ。

 

グレイスワインの本拠

 

これが「甲州」

 

■甲州は日本を代表する白ワイン品種

 

甲州は日本を代表する白ワイン品種で、勝沼を中心に栽培されている。2010年に国際ブドウ・ワイン機構(OIV)より日本初の国際品種として認定され、現在世界でも注目を集めている。

「繊細で透明感があり、すっきりした印象。和食にぴったりな日本らしい味わい」(葡萄屋)で、果皮がえび茶色をしているため、「灰色ぶどう」と表現されることもある。

勝沼は甲州盆地の東端に位置する日本一の「甲州」の生産地。勝沼一帯は扇状地で水はけのよい砂質土壌が広く分布し、古来よりぶどう栽培に適した土地だった。

グレイス甲州の原料となっているのは、勝沼町内の山路のブドウ。標高の高い場所で栽培された甲州は、平地のものと比べ収穫量が制限され、凝縮された味わいになる。また勝沼では、特徴的な入り組んだ地形と複雑な土壌から土地の個性が際立ったブドウが育つという。

圃場では、秋雨の影響を少なくするため、ひと房ごとに笠掛を行い、十分な成熟を待って収穫。丁寧に栽培されたブドウは、ワイナリーにて冷やされ、優しく時間をかけて圧縮されるという。

 

やっと試飲にありついた

 

■勝沼醸造でありついた試飲

 

ワインの試飲は大体午後4時ごろまで。やっと「勝沼醸造」(勝沼町下岩崎)にたどり着いたのも同時刻だった。古民家風の建物で、入り口には暖簾がかかかっていた。そこには飲んでいる人の姿も見えた。

「うちは換気がいいから試飲もできます」。店の外にはテーブルもあって、そこに腰掛けることも可能だった。時間的に試飲は無理かなと思ったが、最後にOKだった。ようやく目的を達成することができてとにかく嬉しかった。結構な道のりを歩いてきて良かった。

「アルガブランカイセハラ」はこれまでに何度も国際的な賞を受賞しており、名前も知られている。2018年にはIWCでアルガブランカイセハラ2016、アルガブランカピッパ2015年、さらにアルガブランカクラレーザ2016年がそれぞれ銀賞を受賞した。

なかでもイセハラ圃場から収穫したぶどうをステンレスタンク内で発酵情勢したアルガブランカイセハラ(白)はピーチ、ライムのような香りを持ち、より強いアロマと重厚感を有し、エレガントな印象が強い。ただ6050円と高いのが欠点だ。

 

ワインサービングシステム「エノラウンド」

 

こちらは高価格帯のワインがずらり

 

■試飲もプリペイドカードで

 

どんな世界でもイノベーションの進化は激しい。ワインと言えば、ボトルからコクコクと注ぐものだとばかり思っていたが、そんな注ぎ方はむしろ時代後れ。今は何でも自動化の時代だ。電動ワインサーバーもあるが、とりあえず勝沼醸造で使っていたのはエノマティック社(イタリア)製のワインサービングシステム「エノラウンド」。

カウンター付きの円形の本体に16本のワインを設置できるエノラウンド。常温または冷蔵タイプが選択でき、冷蔵タイプは8本ずつ異なった温度設定ができる。

もう1つは横に8本並べたエリートシリーズ。客は1000円のワイン試飲専用のプリペイドカードを購入し、差し込み口に投入して100円、200円、400円のボタンを長押しする。そうすると、金額に応じた量が出てくる仕組み。

実にうまいやり方だ。カードは1500円だが、うち500円がカード代。カードは何回でもチャージ(入金)が可能。カードは買取制で返金できない。店側に有利なようにできている。まさか試飲に来てカードを買わないということは考えられない。

 

最後の日に立ち寄った菱山中央酒造

 

■最後に「手絞りワイン」をゲット

 

3日目は帰る日。最後に寄ったのは菱山中央醸造有限会社。「有限会社ぶどうばたけ」(三森斉代表)でぶどうを栽培し、菱山中央醸造でワインを造っている。農家の晩酌用の手絞りぶどう酒。昔ながらのバスケット方式(手絞り)で造ったとてもぜいたくなお酒だという。

三森氏はこの菱山で江戸時代から農家を続ける三森家18代後継者だということを10年前に新宿西口イベント広場で本人から聞いていた。10年前はまだ甲州ワインと言ってもそんなに評価が高くなく、自分が都会で出張販売せざるを得ない状態だった。

現在は知名度も大きく向上し、客のほうからやってくる。彼が新宿で売っていたのは「農家の手作りワイン」(1本2000円)。ボトルにラベルが貼っていない。「農家が自分で飲むために造っているので、ラベルなんか貼らないよ。でもうまいよ」と言った。

ちょうど客人用に1本欲しかったので「菱山甲州辛口ぶどう酒720ml」に飛びついた。今もラベルを貼っていない。コルクの周りに刻印が押してあった。価格が2500円に上がっていたが、10年後に本人と出会えて少し話しできて嬉しかった。

 

これが購入した全ワイン

 

購入したのは全9本1万9595円也。レストランで消費したのも1本あるから、合計10本。名古屋のうちは89本入りのワインセラーがあるという。それを埋めるのが楽しみらしいが、うちは地下の倉庫に詰め込んだ。取りあえず手絞りのワインをいただいた。

 

■勝沼ぶどうの丘

・ナイアガラ   1485円
・Tao    2640円
・ルバイヤート 770円

■グレイスワイン

・グリド甲州2020 2200円
・グレイス甲州2019 3000円
・グレイスロゼ2020 3000円

■ぶどうばたけ

・甲州甘口 2500円
・ロゼ   2500円
・スパークリングワイン 1500円

 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.