公務員は国民のニーズや願いを法律に「翻訳する仕事」=村木厚子元厚生労働事務次官

 

登壇した村木厚子氏

 

ゲスト:村木厚子(元厚生労働事務次官)
テーマ:官僚と政治「公務員という仕事を考える」
2021年7月28日@日本記者クラブ

 

村木厚子・元厚生労働事務次官が登壇し、厚生労働省での仕事や郵政不正事件の経験から考えた公務員の仕事や組織の在り方について話した。司会は福田裕昭日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)

 

■公務員の仕事は「翻訳の仕事」

 

・1978年に労働省に入省。女性を採用する役所は少なく、この年に女性を採用したのは4省庁だけで、女性比率は2%だった時代だった。37年半。21ポストを経験、地方勤務も2回こなした。他省庁への出向は外務省と現内閣府(2回)。59歳で退官した。子どもも2人、夫も労働省の役人。

・裁判を戦い無罪を勝ち取り、1年3カ月は起訴休職。間に抜けはあるが、37年6カ月務めた。

・「公務員の仕事は何か」を考える場合大事にしてきた言葉がある。1つは翻訳。大学の恩師が「公務員の仕事は翻訳の仕事だよ」と言ってくれた。国民のニーズとか願いを法律に翻訳するのが国家公務員、とりわけ政策立案に携わる人間の仕事だ。これは37年半やって正しい定義だったと思っている。

・政治家は何をするか。国民の願いとかニーズを体現している人たちだというふうに思っている。自動車産業で作っていく値段が安く機能の高い車や環境車を決めていくのは政治家。こういう車を作るぞと決まったらその車の設計をしていく、コストの計算をするのが公務員の仕事だ。設計者・技術者であるべきと思った。

・公務員の役割として実感しているのは「連立方程式を解く」役割。国民のニーズは多様だし立場によって意見は違うが、そこに解を求めていかなければならない。粘り強く時間をかけてある程度みんなが満足する形の連立方程式を解く忍耐の要る仕事だ。

 

■NPOや学者、企業がいないと100にならない

 

0を1にするのはNPOの仕事
1を10にするのは学者の仕事
10を50にするのは企業の仕事
50を100にするのは公務員の仕事

・40歳くらいに経済学者の須藤修氏から上のような定義を教えられた。いろんな人と協力してやるという意味合いが見えてきた。大事な転機になった。

・誰かが困っている。そのすぐそばにいて気が付いて解決するためのサービスや商品を作るのは現場の仕事だ。こうやって生まれた新サービスや支援などに理屈を付けてバックアップをするのは学者。いいサービス、いい商品、いい支援であればペイするのなら企業でもできる。役人の仕事はペイしなくても必要だという制度を仕組みとして作っていくのが公務員の仕事。

・この言葉は非常に励みになったし、一方でNPOや学者、企業などがいないと100にならない。理論的な武装をしてくれる人を大事にしペイするところを民間にやってもらうことも重要だし、それでも必要なものを公務員がやっていく。

 

■必要な資質は感性、企画力、説明力

 

・公務員に必要な資質は感性、企画力、説明力の3つ。

・誰が何に困っているのか。どんな課題がここにはあるのか。問題発見力かもしれない。問題を問題として感じ取る力がなければその先にいけない。

・0を1にするのがすべてのスタート地点と考えれば、頭の中での作業だけではだめで、経験とかコミュニケーションする能力とかをも含めて企画力が重要。辞める数年前から説明力を追加した。いい車だと言っても消費者に伝わらなければ売れない。これが弱かった。この3つの力を磨いてくれと後輩にはお願いしている。

・公務員は2流でいい。3流ではダメだよ。2~3年でどんどん変わり、その分野で一生捧げた人には到底かなわない。現場の人に教えてもらいながら、政策に翻訳する部分をしっかりやるのでいいのではないか。政策を把握し何の制度を作るべきかは謙虚に現場から聞くしかない。また専門家を連れてくる。

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