【福島ドライブ】「塔のへつり」で浸食と風化が作った渓谷を愛で、「大内宿」で「ネギそば」をいただいたら東山温泉で待っているのは会津盆地を望む露天風呂

 

 

 

 

 

 

 

■塔の形をした断崖

 

「塔のへつり」とは何のことだろうと思っていたが、現地に行ってみてやっと分かった。長い年月をかけて自然が作り出した渓谷のことだった。

地元の言葉で断崖のことをへつりと呼ぶらしい。断崖が塔の形をしており、それが10個もある。南会津郡下郷町に位置している。

100万年にもわたる浸食と風化が生み出した景勝地で、奇岩が連なっている。国の天然記念物に指定され、下郷町を代表する観光スポットとなっている。

これに類した景勝地は全国至るところに存在するが、それにしても浸食と風化という自然が生み出した姿には驚嘆するしかない。人間は自然の前にひれ伏すしかない。

 

 

■400年前の面影残す町並み

 

大内宿は江戸時代に会津若松市と日光今市を結ぶ会津西街道にある「半農半宿」の宿場町。明治期の鉄道開通に伴って宿場としての地位を失ったが、現在も当時の面影をそのままに茅葺き屋根の民家が街道沿いに建ち並んでいる。

全国的にも同じような町は存在し、岐阜県白川郷や京都府美山町の茅葺きの里とよく似ている。私は2007年の8月と9月にどちらも訪れている。

各家は約400年の歳月を経ても伝統的な茅葺き屋根を残している。これは村の人々の保存活動によるもので、村の人々が協力し合い屋根の葺き替えに取り組んでいる。

 

 

 

 

 

■名物「ネギそば」を賞味あれ！

 

大内宿の全長約1キロは土産物屋や食事処が軒を連ねている。平日なのか休業している店も多く、逆にのんびりと歩くことができた。

大内宿の名物と言えば「高遠そば」（ネギそば）！　箸代わりに1本ネギを使ってそばを食べる独特な文化は長野県の高遠そばが会津の地で広まったことから始まったという。

お店の人に聞いたら「うちの社長の趣味でネギを使うようになった」と言っていたが、福島トリップは「ネギのように細く長く、白鬚の生えるまで長く生きるというお祝いの意味も込めて、ネギを添えるようになった」と書いている。どっちが本当だろう？

ネギそばと同時にとち餅も名物らしい。栃の実ともち米を合わせて作ったお餅で、びよーんと伸びるくらい柔らかさが実に美味だ。

 

 

■たまらない展望露天風呂

 

宿泊したのは会津東山温泉（会津若松市東山町）。今回の目的地は会津若松城（鶴ヶ城）と裏磐梯・五色沼散策だったので、まず鶴ヶ城に近い東山温泉を初泊地にした。

火山大国の日本の中でも東北は温泉大国。「じゃらんnet」会員を対象にしたインターネット上でのアンケート調査によると、東北6県のうち福島県内温泉でスト15入りしたのは9位の会津東山温泉だけだった。ほかは高湯温泉（12位）、会津芦ノ牧温泉（15位）が入っている。

福島県内だけでも温泉郷はたくさんある。岳温泉、土湯温泉など秘湯と呼ばれる温泉郷も少なくない。どんな温泉がいいのかは個人のその時に気分によるものだから何とも言えない。

東山温泉は会津若松の東に位置する山間のいで湯。ネオン街もなく、城下町・会津の奥座敷にふさわしい土地柄だ。その東山温泉の入り口に立地しているのがオリックスホテルズ＆リゾートグループの東鳳。

部屋はむしろ狭かったが、温泉の湯質は良かった。2種類の展望露天風呂があり、空中に突き出た竹林に囲まれた「宙の湯」（そらのゆ）に浸かっていると丸で自身が空と一体化したような気分になれ開放感を味わえる。

「棚雲の湯」（たなぐものゆ）は浴槽が3段階になっていて、上から全身浴、半身浴、最下段は寝湯になっている。湯の深さに変化が付いており、3つの視点から望む景色が楽しめる。

夕朝食はバイキングレストラン「あがらんしょ」。懐かしい田舎家の台所を、会津の美意識とモダンなインテリアで現代風に再現。なかなかたくさんの料理が並び、丸で目が回りそう。

あまりにたくさん食べ過ぎてお腹が苦しくなった。「自分のスタイルでお召しあがりください」と言われても、これだけ見事な料理を目前に給されると目が回る。どれを食べたらいいのか分からなくなる。

だれが開発したのか知らないが、和洋中何でもある。見事だ。何を食べたか分からなくなるバイキングはできればやめてほしいが、スタンダートの旅館・ホテルの朝夕食はほとんどがバイキングだ。