【フォーラム】今回の大きなテーマは防災トイレの「質の確保」だが、世の中的には量も不足しているのが実情で「３．１１」時の対応を現場で聞いた

 

■東日本で初の防災トレイフォーラム開催

 

災害時に向けた地方公共団体のトイレの備えについて情報共有するためにの「防災トイレフォーラム２０２３」（NPO法人日本トイレ研究所主催、宮城県東松島市共催）が９月２９日、東松島市コミュニティセンターで開かれた。

東北では初めての開催で、全国の自治体職員や市内の自主防災組織の関係者ら約３００人が参加した。東松島市は仙台市の北東約３５キロの地点、電車で約４０分の距離に位置している。

災害時のトイレ対策は水、食料の確保と並んで重要だが、「入れる」側はまだしも、排泄という「出す」問題でもあり、なかなか正面から言い出しにくいテーマでもある。

防災トイレは発災直後には携帯トイレや簡易トイレで一時的にしのぐことが可能だが、一番威力を発揮すると思われるマンホールトイレが整備されるまでにはやはり１週間は必要と思っておかねばならない。

今回開催地に選ばれた東松島市では、東日本大震災以前からマンホールトイレを整備していたこともあって、発災時にもそれなりに活躍した。被災時に使ってみると、風で飛ばされる、安心できない、使いづらいなど課題も出てきたという。

しかし住民と行政が協力して改善を重ね、今では地域のお祭りや運動会などのイベントで、マンホールトイレを普段使いで活用しているという。

 

■一番大変だったトイレ対策

 

フォーラムでは大塩市民センター（昔の公民館）の避難所でのトイレ対応が取り上げられた。大塩地区は東松島市の北西約４キロに位置し、海岸からかなり離れている。３．１１では地震の被害はあったものの、直接津波の被害はなかった。

しかし、出先で津波に巻き込まれ亡くなった人、九死に一生を得た人、親戚、兄弟、姉妹、子どもを亡くした人など多くの人が津波被害に遭った。市民センターには震災当日７００人程度の被災者が殺到し大混乱を示したといわれる。

木村喜宥・大塩市民センター所長（当時）は当時の現場の状況について、「震災当日から３日間が食料、水等のすべてにおいて大変だった。避難所として一番大変だったのがトイレの対応だった」と語った。

同所長は「トイレについて、使用不能となった時、外のトイレなので寒く、高齢者や体の不自由な方に申し訳なかった」と述べた。

 

■不衛生な状態極まれり

 

ファーラムでは大塩市民コミュニティセンターの木村所長（当時）のほか、同センターの佐々木美香子事務主任（同）、千葉美智子まちづくり指導員（同）の３人が日本トイレ研究所の加藤篤理事長の質問に答える形で進んだ。３人は要旨以下のように述べた。

・佐々木は発災直後施設の安全確認を行い建物に被害のないことを確かめたのち自宅で家族の安否を確認し、６時間後にセンターに戻ったときは被災者が詰めかけ大混乱していた。

・電話、携帯電話も不通。停電、断水、公衆電話も破損していた。センターを避難所として全館開放した。コミュニティ協議会、自主防災会により全館照明等避難所対応に当たった。

・センター内には男女個室トイレが１１個あったが、みんなが使うのですぐに詰まった。それをチョロチョロ流れていた水道（施設内および施設外ともに）からバケツに水を汲み流し、また詰まるの繰り返しだった。使用不可としロープを張ったが、それでも使いたい人がいて不衛生極まりない状態となった。

・詰まると流れなくなり、その上に排泄することもあった。対策として避難者で班（９班）を編成し、トイレの清掃を行ってもらった。何度も何度も同じことを言わざるを得ずこちらも辛かった。

・３日目の１３日に前年（２０１０年）１１月にセンターに防災トイレ（５基）が設置されていることを思い出して、それを組み立てた。最初は自主防災会などの説明を聞きながら組み立てたが、説明に身が入らなかった。まさか「半年後に使用するハメに陥るとは思いも寄らなかった」

・これまで使ったことのないトイレに入ったが、体が反応してか正直出なかった。何回か行くうちに出るようになったのは「慣れ」と「覚悟」と我慢できない「開き直り」だったとしか言いようがない。

 

■東日本大震災による東松島市被害状況（平成２３年９月７日現在）

 

・発生日時：平成２３年（２０１１年）３月１１日（金）１４時４６分
・発生地：三陸沖
・震源深さ：２４キロ
・規模：マグニチュード９．０
・震度：６強
・津波：野蒜海岸・浸水高１０．３ｍ
大曲地区・浸水高　６．７ｍ
・死者：９７１人（うち東松島市内で被災９８３人）
・行方不明者：９４人（うち認定死亡６０人）
・住宅：１万４４８２棟
全壊５４１０棟
大規模半壊３０３９棟
半壊２３９１棟
一部損壊３６５２棟