三度目の「敗戦」


              (BS朝日「激論!クロスファイア」)

 23日のBS朝日「激論!クロスファイア」のゲストは作家で元経済企画庁長官の堺屋太一氏1人だった。阪神淡路復興委員会委員でもあった同氏が「歴史に学ぶ震災復興への戦略」を提言した。今月2日出演のテレビ東京「週刊ニュース新書」で話した「ニッポン再生プラン」と同じ内容だった。

 堺屋氏の話が面白いのは巧みな話術もさることながら、時代の今を明晰に分析した上で、時代の先を大胆に想像・構想・企画し、インパクトのあるキーワードを駆使しながらビジョンを提示できるプランナーとしての高い提案能力だ。人をその気にさせ、動かすためには魅力的な言葉が不可欠だ。

 堺屋氏は今回の東日本大震災について、1990年のバブル崩壊後20年間にわたって「ダダ下がり」の末に起こった「第3の敗戦」だと指摘する。馬関戦争や薩英戦争に敗れた幕末、太平洋戦争での敗北、そして今回は大自然と国際情勢の変化に付いていけなかったことで敗北した、という。

 同氏は月刊「文芸春秋」5月特別号に「三度目の『敗戦』を日本新生の機会とせよ」との題で寄稿しているが、この中で自らのビジョンを開陳している。幕末の敗戦は武士文化を否定した明治維新によって甦り、太平洋敗戦は軍務官僚(軍部)の排除によって復興を成し得たとした。

 それでは三度目の今回の敗戦にはどう対処すべきか。堺屋氏は「戦後日本をそのまま再現しようとするのでは、日本の新生はあり得ない。この災害をばねに、新しい発想と仕組みを持った日本を創造すべきだ」とし
、「戦後日本をリードしてきた官僚主導・業界協調の体制を否定し、真に創造的自由のある体制を築くことだ」と主張する。具体的には以下の政策を提言する。

■官僚を有資格なら出世する「身分」から、有能有志の者が適職に就く「職業」に変える。身分社会をやめる。

■外国を恐れぬ心理と情況を創る。「好き好き開国」に変える。

■規格大量生産のために造り上げられた東京一極集中の形を地域主権型の道州制に変える。

■「好老文化」を創ることで高齢化世界をリードする。高齢者を誇り高く楽しめる世の中にすれば、巨大な需要と新鮮な文化が生まれる。

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