カダフィ政権崩壊

1969年に軍事クーデターで国王を追放し、40年以上にわたって独裁体制を敷いてきた最高指導者カダフィ大佐の率いるリビア政権がようやく崩壊した。北大西洋条約機構(NATO)の軍事支援を得た反カダフィ派部隊が首都トリポリ中心部を制圧した。政権幹部も続々と離脱しており、政権の体を失った。

カダフィ大佐はトリポリ中心部「緑の広場」から4キロはど離れた郊外の居住区兼軍事施設バーブ・アジジヤ地区に立てこもり、最後まで徹底抗戦する構えを捨てていないという。同居住区にはかなりの武器・弾薬が集積されているとみられ、市街戦に発展する可能性もなお残っているようだが、反政府勢力による政権掌握は時間の問題だろう。

問題はもちろん、カダフィ政権が崩壊したことで終わるわけではない。エジプトでも同じだが、40年以上も続いた秩序が崩れ、新しい秩序が出来上がるまでにはそれ以上のエネルギーが必要だ。信用は一瞬に崩れるが、築き上げるためにはものすごい時間が要るのと同じだ。反政府勢力とは言えど、間に合わせの寄せ集め集団で、統治能力がどれほどあるか疑わしい。カダフィ政権を倒したのは彼らではなく、米軍とNATO軍だ。反政府勢力が実力で倒したのではない。

恐ろしいのはトリポリ陥落に伴う混乱で、カダフィ政権の保有する大量の旧ソ連やロシア製の武器が流出し、テロリストの手に渡ることだ。米国防省筋によると、カダフィ政権は旧東欧諸国から熱線追尾ミサイルや携行式地対空ミサイルを2万発も調達していたという。とりわけ携行ミサイルは高値で売れるため、カダフィ政権からだけでなく、反政府勢力からもテロ組織に流出する恐れがある。アルカイダに流れれば恐ろしいことになりかねない。

カダフィ大佐側はマスタードガスなどの化学兵器も保有しているという。マスタードガスは10トン以上が貯蔵され、NATO軍が衛星や偵察機などで貯蔵場所を集中的に監視している。

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