神戸文学館

 神戸は洋菓子、映画、ジャズ、マッチなど様々なものの「発祥の地」だが、「探偵小説発祥の地」でもあることは知らなかった。昨年12月に開館した「神戸文学館」(神戸市灘区王子町3-1-2)の企画展で初めて知った。

 「神戸の港には諸外国からの客船・貨客船がたくさん入港しました。それらの船には長い船旅の無聊を慰めるために肩のこらない読み物、特にミステリーが積まれていました。神戸入港時にそれが街の古本屋に出回り、いち早くとりついた人々の間から、神戸発のミステリーが生まれました」という。

 神戸を探偵小説の街にする上で貢献したのが西田政治。古本屋に出回った外国の短編小説を数多く翻訳し、戦前の探偵小説雑誌に掲載した。西田政治は神戸探偵小説クラブを主宰し、横溝正史や江戸川乱歩と親交を深めた。

 その系譜は「枯草の根」で江戸川乱歩賞を受賞した陳舜臣、さらには戸田巽、島久平などに引き継がれている。いつぞや中央区東川崎町の一角に横溝正史の生誕地碑があるのに驚いたことがあった。

 神戸文学館の建物は1904年(明治37年)、関西学院のチャペルとして建てられた建築物。神戸大空襲で被災し、戦後はアメリカ文化センターや市立図書館、市民ギャラリーとして使用されてきたが、昨年12月4日、赤レンガ造りのチャペルの外観を復元し、神戸文学館として生まれ変わった。

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