iPS細胞シートで年内に網膜患者へ移植手術

髙橋政代氏

ブリーフィングする髙橋政代氏

 

テーマ:「iPS細胞の網膜疾患への応用」
会見者:髙橋政代(理化学研究所発生・再生科学総合研究センタープロジェクトリーダー)
2014年2月13日@日本記者クラブ

2006年に山中伸弥京大教授が iPS細胞(人工多能性幹細胞=induced  pluripotent stem cell )の作製に成功したかと思うと、今年1月には髙橋氏の所属する同センターの小保方晴子研究ユニットリーダーがSTAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞=Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency cells)の作製に成功。とにかく医学の世界は日進月歩。とても付いていけない。

iPS細胞だけでも難解だったのに、今度はSTAP細胞の登場だ。少し前はES細胞(胚性幹細胞)というのもあった。いずれも万能細胞だという。通常の細胞は筋肉なら筋肉、肝臓なら肝臓の細胞にしかなれないが、どんな種類の細胞にもなれるのが万能細胞だ。

1個の細胞から全身の細胞を作り出す受精卵が究極の万能細胞。少し成長した受精卵を壊して取り出したのがES細胞だ。これらは胎児になる細胞で、胎盤の細胞を使うという。どちらの細胞も体内で作られたものだ。

それに対して体外で作り出された細胞がiPS細胞であり、STAP細胞。山中教授は、皮膚などの細胞の核に特定の遺伝子を入れることで、組織や臓器になる前の受精卵のような状態に戻す「初期化」が起こることを世界で初めて示し、iPS細胞を作り出すことに成功した。「大量生産できる上、産業化のビジネスモデルづくりも可能」(髙橋氏)。

小保方グループは今回、遺伝子を入れるなどの操作をしなくても、細胞の外部からの刺激だけで初期化が起きることを示した点が画期的だった。また、iPS細胞は作り出すのに2週間から3週間かかるが、STAP細胞は1週間ほどでできるという。

外部からの刺激だけで細胞が万能性を獲得するという考え方は生物学の常識を覆すものだが、その原理はまだ分かっていない。体の中ではこうした変化が起こらないメカニズムも謎だ。

髙橋氏は現在、目の難病の加齢黄斑変性を患者本人のiPS細胞から作った細胞シートで治療する臨床研究を行っている。6人の患者を選び、年内に移植手術を行う予定。STAP細胞を使った治療にも関心を示したが、現状では「遺伝子の働きや仕組みの研究がかなり進んでいるiPS細胞のほうが使いやすい」という。

「病気は治るところは治ってきている。医療にとって予防と再生が大きな要素」とも述べた。病気が発症し、予防が間に合わなかった者にとっては「再生医療」への期待が大きい。

 

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