OPECの”復権”

 石油輸出国機構(OPEC)が3月16日、イランのイスファハンで開いた総会で、原油生産枠(現行日量2700万バレル=イラク除く10カ国)の50万バレル引き上げを決めた。1バレル=約159リットル。原油高騰が続くなら、早ければ5月から、増産枠をさらに50万バレル拡大する方針も打ち出した。

 北半球はこれから春・夏の不需要期に入る。この段階では本来、減産決定が普通だが、今年は例年と異なる。不需要どころか、中国、インドなどの”新興大国”の原油需要が大きく伸びているからだ。北海油田や非OPEC産油国の生産低迷に加え、北半球の厳冬も拍車を掛けた格好だ。

 OPECの増産決定で、本来なら原油相場も反落に向かうはずだが、実態は逆で、下がるどころか上昇に勢いが付き、世界の石油相場を主導する週末3月18日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)WTI相場は前日終値比0.32ドル高の56.72ドルと終値ベースで過去最高値を更新した。日中付けた高値は57・00ドル。

 50ドルの価格はとても信じられない。私がOPEC取材に明け暮れた1980年代後半は10ドルを割り込み、大変な騒ぎだった。OPEC首脳はジュネーブやウイーンはもちろん、欧州各地で鳩首会議を開き、対応策を協議。メジャーの力が強く、OPEC内部対立ばかりが目だって、右往左往した。取材する側もそのどたばたに付き合わされた。

 現在の高価格はOPECにとって決して悪い状態ではない。高いからといって、客が逃げるわけではないからだ。元々の客は嫌な顔をしているものの、中国などの新規顧客が争って、買いにくるものだから、値引きする必要もないからだ。黙っていても、売れる。

 しかし、いつまでもそんな状態が続くはずもない。無茶な価格で売っていれば、いずれ咎めがくるのは世の倣いだ。高石油価格が世界経済を疲弊させ、需要減退を招き、結果的に油価暴落という悪夢の再来だってあり得ない話ではない。OPECはそのことを骨身に沁みて知っているはずだ。

 マーケットを動かしているのはNYMEXで暴れている投機資金だ。ファンドに集まるホットマネーだ。マネーゲームそのものだ。しかし、マーケットはこうした要素も吸収して、いずれ、適正な価格に収斂していくはずだ、ただ、その過程では行き過ぎる。これが問題だ。それを管理することはだれもできない。

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