新日本石油、イラン原油代金を円で支払いへ

 新日本石油がイランへの原油輸入代金の支払い通貨をこれまでの米ドルてから円に変更する方針を決めた。イラン側の要請に応じたものだが、このことの意味は意外と大きい。最大手の新日本石油の動きに出光など他の元売りが追随するのは確実だ。

 日本にとってイランは主要石油輸入国で、新日本にとってもサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートに次いで4番目。日本としては「円の国際化」(懐かしい言葉だ)の観点からも円建て決済は歓迎できるが、石油はドル建ての世界だし、米国にとっては面白くないはず。

 新日本石油の方針決定は米国が異論を唱えないことを踏まえた上でのことだろう。それにしても、ちょっと少し前まではイランを北朝鮮と並んで「悪の枢軸」と呼んでいた米国がよく、これを黙認したものだ。日本企業のアガザデン油田開発に横槍を入れて潰した米国がイランの要求を受け入れる日本を今回、放置したのはなぜか。

 米国はイランの核開発問題をめぐって強硬に同国と対立。イラク空爆の次はイラン攻撃であっても不思議はなかったはずだ。それも今年初めのころは攻撃は明日にでも行われてもおかしくない雰囲気だった。

 それがどうも様子が異なる。このごろは両国間で非公式ながらも秘密交渉が行われていることが公然と言われている。米国側にもイラン側にも全面対決は好ましくないとの判断があるからなのだろう。

 この判断の背景には中東情勢の緊張がある。レバノンをはじめ、中東全域でイランが影響力を持つシーア派が勢力を浸透させているからだ。最早、中東安定化のためにはイランの協力が不可欠だからだ。

 大産油国でありながら、ガソリン割当制の導入に踏み切らざるを得なかったイランとしても、石油精製能力の近代化や新規油田開発には米国を中心としたメジャーの技術導入がどうしても必要だ。イランにとっても米国との協調は死活問題になったからである。

 国際社会は表面上の動きと水面下の動きは別で、ある時点でガラリを変わることも日常茶飯だ。日本は米国以上にイランとの関係が深い間柄で、信頼関係も強い。これを活用しない手はない。今回の新日本石油の円建て決済への変更が日本・イラン関係の改善につながることを期待したい。

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