藤原伊織「遊戯」

 8月中旬、神戸元町通りにある海文堂書店にぶらっと入ったら、新刊書のところに藤原伊織の「遊戯」が並んでいたのでためらわず買った。今年5月17日、食道癌のため死去した作家。歳が同じなのと作品の世界が好きで、大体読んできた。

 タイトルになった「遊戯」(小説現代2005年1月号)は著者が闘病中も書き続けた作品。これを受けた形で物語は「帰路」(同2005年3月号)、「侵入」(同2005年11月号)、「陽光」(同2006年1月号)、「回流」(同2006年3月号)と展開していく。

 主人公は人材派遣会社社員の本間透と派遣社員、その後CMモデルにスカウトされる朝川みのり。ネットビリヤードのサイトで知り合い、OFFで対面。そこから物語りは広がっていく。会話が楽しい。こういうのを大人の会話というのだろうか。

 最後に所載されている「オルゴール」はそれまでの5編とは無関係の中篇。これが遺作になった。読み続けたいのに途中で終わってしまって、それ以上読むことはもう叶わない。とても残念だ。

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