バイオエタノール考
化石燃料(石油)に代わって、CO2を排出しない新たなエネルギー源の決め手として脚光を浴びているのがバイオ燃料。風力発電、地熱発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーが自然条件を選ぶのに対し、バイオマスは比較的どこにもあり、エネルギー源としては最適だ。
バイオ燃料の代表例がバイオエタノール。サトウキビやテンサイなどの糖質系作物、米、麦、芋、トウモロコシなどのデンプン系作物を搾って、それを糖化し、微生物の力を利用して発酵させて作られる。生産技術的には焼酎を作るのと同じである。
草や木、廃材、古紙などのセルロース(植物の体を作っている細胞の一番外側の細胞壁の主成分)も原料になるが、製造工程が多くなり、その分、時間、手間、エネルギーが必要となるため、まだ日本では作られていない。将来的には海草などを含め、セルロース系は極めて有望なバイオエタノールの原料とされている。
バイオエタノールが世界的脚光を浴びるきっかけはブッシュ政権のエネルギー政策。2006年1月の一般教書演説で、紛争の絶えない中東地域からの原油依存度を引き下げるために、バイオエタノール開発促進を提唱。07年1月の一般教書演説でも2017年までにガソリン消費量の2割削減方針を表明したからだ。
これを契機に、米国ではバイオエタノールブームが沸騰。エタノールを85%まで混入した「E85」燃料を販売するガソリンスタンドも増え始めたという。ブラジルでは米国よりも早くから、サトウキビを原料としたバイオエタノール燃料が普及。EUもビート処理のために生産が促進されている。
問題はバイオブームによって穀物価格が高騰したことだ。とりわけ、米国では主要輸出作物であるトウモロコシ価格が急騰し、国際価格も異常なほど値上がりした。大豆農家のトウモロコシへの転作加速も起こり、日本を含むトウモロコシ輸入国の食卓に甚大な影響を及ぼしている。開発途上国では食糧危機が叫ばれている。