『動物の行動を科学する』

 第38回東京大学農学部公開セミナー『動物の行動を科学する』が農学部弥生講堂・一条ホール(文京区弥生1)で開かれた。農学部と大学院農学生命科学研究科主催。1991年から年2回開催ペースで始めてそろそろ20年になるという。何がきっかけだったか忘れたが、何度も来ている。難しい話を一般人にも分かりやすく話してくれるのがみそだ。

①カラスの特異な食習性と地域食文化=生圏システム学専攻 樋口広芳教授

 カラスは好きではない。好きではないが、結構見掛ける。人の顔を識別できるようなので、なるべく目を合わせないようにしている。このカラスは独自の文化を持っており、人間に似ているという。あんまりお近づきにはなりたくないが、攻撃された場合に備えて、習性を知っておくのは悪くない。

■日本で日常的に見られるのはハシブトガラス(嘴太鴉)とハシホソガラス(嘴細鴉)の2種類。くちばしが太くて、おでこが盛り上がっているのがハシブトガラスで、都会に住む。「カァーカァー」と澄んだ声で鳴くことが多い。ハシブトよりやや小柄で、くちばしが鋭く尖っており、おでこのでっぱりも少ないのがハシボソガラス。郊外や海岸近くに住む。鳴き声はは「ガァーガァー」とガラガラ声。

■カラスの行動は多様で柔軟性に富む。地域と結びついた特異な行動をとる。

 ・貝やクルミを割って食べる。赤信号で止まっている車のタイヤの前に出ていってクルミを置くものもいる。自分たちのやっていることの意味を正しく理解している。

 ・石鹸やロウソクをかじる。含まれている油脂分が大好き。保存食として最高のようである。千葉県松戸市の幼稚園の屋外にある洗面所から石鹸を3-5週間で60個も持ち去り、近くの林や人家の庭先の地表付近に埋め込み、落ち葉などをかぶせ、外から見えないようにして、あとから少しずつかじって食べる。

 ・京都市内の神社で野外に立てられたロウソクを持ち去るカラスもいた。

■食文化を持つ

 カラスはいろいろなところに棲み、いろいろなものをとって食べる何でも屋としての性質を持っている。その季節、その場所の状況に合わせて手に入りやすいもの、好みのもの、栄養価のあるものを見つけ出して食べている。ヒトとカラスは共通する点が実に多い。

②蛾のプロポーズ―匂いと音によるコミュニケーション―=生産・環境生物学専攻 石川幸男教授(略)

③マツノマダラカマキリ成虫の行動と松枯れ=森林科学専攻  富樫一巳教授(略)

④悩めるペットの行動治療=応用動物科学専攻=武内ゆかり准教授

 日本は空前のペットブーム。犬と猫の総飼育数は既に19歳以下の人口を凌ぐ勢いだという。社団法人ペットフード協会が実施した平成21年度(2009)犬猫飼育率全国調査によると、総飼育数は2234万頭。直近3年間は横ばいだが、それでも高飼育率を維持している。

 問題は多くのペットが飼育されながら、問題行動を理由に飼育放棄される動物も少なくないこと。こうした現状に対応するために発展してきたのが問題行動を治療する「動物行動治療」だ。聞き慣れない言葉だが、いろんな需要があるものである。

 ペットを否定するものではないが、それにしても首を傾げる場面をよく見掛ける。犬猫は自分で歩くと思っていたら、最近のお犬様はご主人の腕に抱かれたり、自転車の荷台のバスケットに乗ったり、寒さ対策でセーターを着込んだり、もうほとんど人間様のようである。

 これが何を意味しているのか。人間には愛情を注ぐ対象が必要だ。犬猫がその代替物になり得るとしたら、もうそれは自分のこどもを猫可愛がりするのも同然である。ペットがきちんと育つとはどうも思えないのだが、どうなのだろうか。


 

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