近江牛@まるたけ近江西川

 どういうわけか、このところ近江にはよく来ている。丹波からの帰途、名神を使うにしろ北陸道を使うにしろ、近くを通る上、この辺りは戦国時代に豪族が京都を目指し、激戦を繰り広げた古戦場が多く、つい立ち寄りたくなってしまうからだ。来年のNHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」も舞台(浅井長政の居城・小谷城があった長浜市)は近江である。

 2008年6月には神戸在勤時代の記念に近江八幡と彦根を歩いたほか、09年9月には佐川美術館を訪ねたついでに安土城城址に登った。今年は5月に長浜城から琵琶湖を眺めた。5月に時間切れアウトだったため今回目指したのが彦根市。

 しかし、彦根城は流石に名城ではあるものの、歴史的な町並みとして見るべきなのは近江八幡(おうみはちまん)だ。豊臣秀次の開いた城下町で、現在も碁盤目状の町並みを残している。近江商人を代表する豪商の屋敷や白壁の土蔵が往時をしのばせる。近江商人発祥の地だ。

 近江八幡が栄えたのは町が掘割りで琵琶湖とつながり水運の中継点として機能したためだ。歴史的町並み保存地区に近い「八幡堀」はよく整備された観光スポット。鬼平犯科帳のエンディング曲「インスピレーション」に映る堀がここだったのは後で調べて知った。手こぎ舟による水郷めぐりも楽しめる。

 町を歩いていてびっくりしたのは傷や肌荒れの生活常備薬「メンターム」を製造・販売する近江兄弟社の本社があったこと。同社を創業したのはウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏(William Merrell Vories 1880-1964)。キリスト教の伝道を志し、1905年に滋賀県立八幡商業高校に英語教師として赴任した「青い目の近江商人」だ。

 ヴォーリスはキリスト教精神に基づき、さまざまな分野で信仰と事業を両立させた社会奉仕活動グループを構築したが、中核の企業活動(医薬品・医薬部外品・化粧品事業)以外に、文化伝道奉仕活動、教育活動(学校経営)、医療保健福祉活動(病院・老健センター・ケアハウス)を行うなど極めてユニークな活動を展開している。

 なかでもヴォーリスが残した事業の中で、最も古い歴史を持っているのが株式会社一粒社ヴォーリス建築事務所。建築家集団だ。町を歩いていると、近江兄弟社ビルのほか、アンドリュース記念館、ヴォーリス記念館、旧八幡郵便局などのヴォーリス建築があちこちに建ち、和風建築の中に溶け込む不思議な光景だ。

 近江兄弟社と並んで近江企業として名をとどろかせているのは菓子業「たねや」。明治5年(1872)に八幡町池田町で創業。創業以来のロングセラー「栗饅頭」に加えて、今や看板商品にのし上がった皮種と餡が別々に包装された合わせ最中「ふくみ天平」(ふくみてんびん)が好調で、今や全国展開する菓子メジャーにのし上がった。

 1951年からは洋菓子にも進出し、79年には洋菓子部門の関連会社を設立するなどグループ会社化を進めた。2006年にはグループ本社を近江八幡市から愛荘町に移転したものの、たねやの本店は同市宮内町日牟禮ヴィレッジ。日牟禮八幡宮の境内だ。


 ブログ写真が最後になってしまった。ランチを食べたのが近江牛レストラン「まるたけ近江西川」。1階に近江牛の直売部とレストラン、2階はお座敷。1階レストランで焼肉御膳をいただいた。東京の客人が丹波に持参したのも牛石産業株式会社(近江信楽町)加工の近江牛。近江牛尽くしも格別である。

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