震災・株安・円高の三重苦

  日本が三重苦に直面している。トリプルパンチをもたらした震源は3月11日に三陸沖から茨城・千葉にかけて襲った東日本大震災で、死者・行方不明者は既に1万5000人を突破した。被災地の生産・流通インフラは壊滅的打撃を受けた。現地の惨情はメディアを通じて国内・全世界に伝えられ、不安心理が共有されていく。

 津波被害の大きさだけでも身がすくむが、不安心理を決定的に高めているのが地震の直撃を受けた東京電力福島第1原子力発電所の危機的状況だ。事故発生直後から異常が発生し、時間を追うにしたがって状況は好転するどころか深刻化する一方だ。しかも、その危機対応がリアルタイムで全国民が注視する中で進んでいる。

 危機の中心は「放射性物質」という目に見えない脅威に対する不安・恐怖である。人体に対する健康被害は原発周辺地域にとどまらず、風に乗って広く拡散する。放射能という言葉を聞いただけでも身震いする人もいるだろう。

 震災が日本経済に及ぼす甚大な影響と先行き見通し難が内外投資家の不安に拍車を掛け、日経平均株価が9000円を割り込む水準まで売り込まれ、外国為替市場では投機ファンドが円買いを膨らませ、海外市場では一時1ドル=76円25銭とそれまでの最高値(79円75銭=1995年4月)を更新した。17日の東京市場の終値(日銀公表値)は79円21銭だった。

 原発を取り巻く危機を日本が乗り切れるかどうか、日本国民はもちろん、世界が固唾を飲んで見守っている。原発関係者の決死の取り組みに運命を託し、彼らの仕事を信じるしかない。危機対応に無知・無関心だった自らを恥じ、改めて危機克服のために何ができるかを自らに問う機会でもある。

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