「原発再稼働」問題を考える

山名元京大原子炉実験所教授(BSテレビ朝日)

 

東京電力の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)6号機が3月26日発電を停止し、国内54基の原発のうち、稼働しているのは北海道電力泊原発3号機の1基だけになった。その1基も5月5日に停止し、 定期検査に入る予定だ。そうなれば、国内商業用原発54基が全面的に停まることになる。

問題は今夏に懸念される「電力不足」。昨年夏は計画停電と節電などで何とか乗り切ったものの、現在模索されている関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が実現できない場合、原発稼働ゼロ状態で夏を迎えることになる。しかし、節電意識が薄れ、供給余力もある現状では、本当に電力不足が発生する可能性が高いのかどうか。

政府が2011年11月に公表した12年夏の電力需給見通しでは、再稼働がなく、10年並みの猛暑だった場合、電力供給余力は、関西電力で19.3%不足、東京電力で13.4%不足、九州電力で12.3%不足、四国電力で11.3%不足、北海道電力で6.4%不足、北陸電力で1.5%不足する恐れがあるとしていた。

しかし、原発反対派の河野太郎自民党衆院議員は7日放映(6日収録)のBS朝日番組『激論!クロスファイア』で、「政府サイドの見通しは根拠が怪しく、信用できない」と指摘した。経産省や電力会社が言うことも出してくるデータも信用できないと強調。政府は昨年夏、強力な「電力不足キャンペーン」を展開したが、東電が電力消費を過大に見積もっていたことや企業の自家発電を供給に含めていなかったなど、推計が極めて「どんぶり勘定」だったことがあとで発覚した。

原発擁護派の山名元京大原子炉実験所教授は、電力供給が足りているとしても、節電や火力発電総動員のほか、気温要因が良かったために不足を生じなかったためで、供給余力(予備率)は5%からできれば8%は欲しいとしている。

12年の夏が猛暑になるのか、そうでもないのかは分からないが、最悪の猛暑になっても対応できる余力を備えておくのが政府の仕事ではないだろうか。電力が余ったから、節電する必要がなかったとは言えない。常に最悪の事態を想定して、対策を講じておくのが政策だ。政府は「狼少年」だったとの指摘はおかしい。

政府が「原発再稼働」を誘導するために、電力不足を煽ったという指摘はあながち間違いではないかもしれないが、電力を不足させ、大混乱を引き起こすよりははるかに増しだと思う。原発を巡っては反対派が勢いづいており、擁護派は今や劣勢だ。原発が甚大な事故を起こしたことは否定できない事実である以上、批判されてもやむを得ない。

問題はこれからどうするかだ。

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