『少年と自転車』

「帰って来ない親を施設で待ち続ける子どもの話」

 

作品名:『少年と自転車』(2011年/ベルギー・フランス・イタリア/87分)
キャスト:シリル・・・トマ・ドレ
サマンサ・・・セシル・ドゥ・フランス
監督・脚本:ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ
観賞館:吉祥寺バウスシアター

超大作でも話題作でもないが、気になる映画だった。封切り館での上映が終わってから慌てて探したら、吉祥寺でやっていた。高レベル放射性廃棄物の最終処理場をテーマにしたドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」のように地味だが、問題意識の鋭い作品を上映する映画館だ。

ダルデンヌ監督が2003年に来日した際聞いた「赤ちゃんの頃から施設に預けられた少年が、親が迎えに来るのを屋根に上って待ち続けていた」という話に着想を得て制作したという。

親に見捨てられた少年シリルが、初めて信頼できる大人サマンサに出会うことで心を開き、人を信じ、善悪を学び、成長していく。サマンサもシリルに愛情を与えることで、内なる母性に気づき、人を守ることの責任と喜びを知っていく。人は人とつながることで初めて生きていく希望を持てる。そうしたシリルとサマンサの心の交流を描きだす。

映画の中ではシリルを捨てた父親が昔買って、その後売り飛ばした自転車が重要な役回りを演じている。サマンサが買い戻したことで戻ってきた自転車をシリルはどこへでも疾走させる。自転車があって初めて映画の世界が完成するほど重要な存在だ。なかなか味わいのある作品である。

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