『下町ロケット』

 

書名:『下町ロケット』
著者:池井戸潤
出版社:小学館(2010年11月29日初版第1刷発行)

朝からずっと雨が降り続ける日曜日の朝食後から、リビングのソファに寝転びながら、ちょこっと読み始めたら止まらなくなってしまった。仕事をしたり、天然温泉に浸かったり、NHK大河ドラマ「平清盛」を見つつご飯を食べながらも、ずっと読み続け、夜9時にベットにもぐり込んでからも本を手放さなかった。

10時になり、11時をすぎ、そして午前零時を迎え、さらに時間が経っていく。それなのに、消灯して寝に就くことができなかった。結局、読了したのは午前1時30分。これまで随分本を読んできたが、学生時代はともかく、1冊の本を読み終えるまでずっと読み続けたことは最近ではない。この本はそんな珍しい本になった。

主人公は宇宙科学開発機構の研究員をしていた佃航平。父親の死に伴って家業(精密機械製造業)の佃製作所を継いだ。父親が社長をしていた頃は電子部品を得意としていたが、大学と研究所で主にエンジンを研究してきた佃が社長になってからは、より精度が求められるエンジンやその周辺デバイスを手掛けるようになった。

売上高100億円に満たない中小企業のオヤジだが、佃が社長になってからの佃製作所は、売り上げが3倍になって周囲を驚かせた。ことエンジンに関する技術とノウハウは大企業をも凌ぐという評判は、ロケットエンジンの設計製造に関与してきた佃の実績によるところが大きい。

そんな彼がたび重なる苦難を、社員との様々な葛藤や同社の特許を狙うライバル会社の卑劣な訴訟戦略などにぶつかりながらも、ロケット技術者として国産ロケット打ち上げに参加したいという青臭い夢にあくまでも拘り続け、ひたすら夢実現に走り続けるヒューマンドラマ。下町の心・根性が一杯詰まった下町ロケットが苦心惨澹の結果、天空に飛んでいく。

中小企業のオヤジの心意気を見事書き切った。筋書きはシンプルだが、心の熱くなる作品だった。

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