「見たくないものは見えない」

街を歩けばクリニックに当たる

街を歩けばクリニックに当たる

 

「見たくないものは見えない。見たいものが見える」(ローマ帝国ユリウス・カエサルの格言)。

東京電力福島原子力発電所事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東大名誉教授)は2012年7月23日に公表した最終報告書の最後に、「委員長所感」を記している。

「今回の事故からどのような知識が得られるかについて整理した」もので、所感は全部で7点。2番目に記したのがカエサルの言葉だ。

「人間はものを見たり考えたりするとき、自分が好ましいと思うものや、自分がやろうと思う方向だけを見がちで、見たくないもの、都合の悪いことは見えないものである」との教訓を引き出している。

「東京電力の自然災害対策において、津波に対するAM (アクシデント・マネジメント)策を整備していなかったことや、複数の原子炉施設が同時に全電源喪失する事態への備えがなかったことにも、このような人間の心理的影響が垣間見える」と指摘している。

こんな大げさな話をするつもりは全くなかった。胸痛がこのところ、立て続けに起こったので掛かり付けの内科医に行ったら、心臓血管外科の専門医を紹介された。

年内最終日のきょう、恐る恐る指定されたクリニックに行った。そのクリニックは前の勤務先と目と鼻のところにあった。銀座5丁目。昭和通りを渡った東銀座だ。その辺りは10年以上もうろうろした場所だから、大体何があるかは分かっているつもりだが、クリニックについては記憶がなかった。

2006年に開業し、東銀座には2010年8月に移転してきたという。2年間ほどはその前を何度も通っているはずだ。1階の和装販売店・銀座橘苑はよく覚えている。2階だったから目が行かなかったのかもしれない。

それまであったビルなどが壊され、更地になったとき、それまでどのようなビルが建っていたのかよく覚えていないことがよくある。いつも前を通りながら、目線も向けていながら、そういうことがある。それは即ち、関心を持って見ないと、見えないということだろう。

見たくないもの、関心がないものは実際には見ていない、ということだ。それが言いたかった。それがたまたま東電事故調の報告書に書いてあったことを思い出した。

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