風景が変わる
東京練馬区の一角に引っ越してきたのは約17年前。3男が高校に入学した年だった。地元の地主さんが売り出した3区画を3軒が別途購入し、それぞれ自宅を建てた。
家の西側は大きな駐車場だったが、6年ほど前に暮らしの実用品を安く提供するバラエティーショップ「ジェーソン」(本社千葉県柏市)が開店。書斎の窓から見えるのは店舗の壁で、その上に辛うじて空を眺めることができるだけの殺風景な景色に暗転した。
これではいくら天気が良くても、開放的とは言えない。天気が悪いと、どんよりした雨天、曇天が重く垂れふさがるだけで、いよいよもって気が重くなる。視線を外に向けても、想念が広がることもない。
それでも南側は実に開放的だった。日差しは燦々と当たるし、谷原のガスタンクが視野に飛び込んでくるものの、目の前の畑は建物が何もなく、広々としていた。おまけに地主さん宅は木々に覆われ、まるでちょっとした森だ。
夏みかんなどの果樹やいろんな花も咲き乱れ、尾長鳥などの野鳥もやってきて、さえずりの声を聞かせてくれる。ヒマラヤ杉はとりわけ高く、ちょっとしたシンボルだ。
ここにマンションが建つことになった。私たちの家の前は駐車場になるという。建築会社の担当者が説明に来たことで明らかになった。一角にある歯医者さんの駐車場が引っ越したり、測量が入ったりしていたため、もしかしたらとは思ったが、それが現実になった。