試写会『サウルの息子』

 

主人公サウル役の詩人ルーリグ・ゲーザ氏(パンフレット表紙)

同胞のユダヤ人をガス室に送り込む任務に就く<ゾンダーコマンド>のサウル(パンフレット表紙)

 

作品名:『サウルの息子』(2015年ハンガリー映画)
監督:ネメシュ・ラースロー
サウル役:ルーリグ・ゲーザ
2015年12月22日@日本記者クラブ
2016年1月23日から新宿シネマカリテ、ヒューマントラスト有楽町ほか全国ロードショー

 

何とも衝撃的な内容だった。見終わったあと、しばらく席を立てなかった。かって、こういうことがあったことを知識としては知っている。しかし、なるたけ触れたくない事実だ。そんな事実を突き付けられたら、誰でも立ちすくむ。

「1944年10月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。サウルは、ハンガリー系のユダヤ人で、ゾンダーコマンドとして働いている。ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜した、同胞であるユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊のことである。彼らはそこで生き延びるためには、人間としての感情を押し殺すしか術が無い」

「ある日、サウルは、ガス室で生き残った息子とおぼしき少年を発見する。少年はサウルの目の前ですぐさま殺されてしまうのだが、サウルはなんとかラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出し、ユダヤ教の教義にのっとって手厚く埋葬しようと、人間の尊厳をかけて最期の力を振り絞る」(パンフレット)

第68回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。ユダヤ教では火葬は死者が復活できないとして禁じられている。

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(1940―45年)はナチス・ドイツが欧州中に設置した強制収容所の1つ。ドイツ占領地のポーランド南部オシフィエンチム市(ドイツ語名アウシュイッツ)に第一収容所、隣接するブジェジンカ村(同ビルケナウ)に第二収容所が造られた。モノビツェ村(同モノヴィッツ)には第三収容所も建設された。

さすがにポーランドまでは足を伸ばせなかったが、ハンブルグに近い北ドイツ・ツェレ(Celle)近郊の「ベルゲン・ベルゼン強制収容所」には行ったことがある。1980年代後半、ロンドンから車を大陸に持ち込んで、ドイツまでドライブしたときだ。ハノバーの街近くを走ったことを覚えている。そのとき使った道路地図を見ながら、しばし感慨にふけった。

同収容所は病人や高齢者を収容する「休養収容所」の位置づけだが、治療が行われることはなく、囚人を飢餓状態に放置し、餓死や病死させた。ユダヤ人少女アンネ・フランクもここに収容され、チフスに罹って死亡した。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.