『鬼平犯科帳スペシャル浅草・御厩河岸』
昔、幕府の馬屋があったことからその呼び名が付いた浅草の御厩河岸の渡し場の近くに、一膳飯屋を兼ねた小さな居酒屋があった。店内ではお勝(小林綾子)とその母で盲目のお八百(南條瑞江)がせっせと働いている一方、店主の岩五郎(田辺誠一)は、店の軒先で居眠りをする怠け者。しかし、この岩五郎は火付盗賊改方長官・長谷川平蔵(中村吉右衛門)の密偵だった。
岩五郎は昔、器用な手先をいかした錠前外しを生業としており、盗みで捕まった際に平蔵やその密偵・大滝の五郎蔵(綿引勝彦)から温情を受け、今では平蔵の密偵として働いているのだった。
そんな岩五郎のところに、大盗賊の海老坂の与兵衛(田村亮)から盗みの依頼が入る。本来なら、密偵として与兵衛の動きを平蔵にただちに知らせなければならない岩五郎だが、めったにない大仕事な上に、これまで外したことのない難しい錠前の図面を前に、その錠前を外したいという欲望にかられてしまう。
今回の『鬼平犯科帳スペシャル浅草・御厩河岸』は、中村吉右衛門主演・連続ドラマの第1シリーズ・第18話として、1989年に放送されたものを、スペシャル用にアレンジした作品。中村吉右衛門主演のシリーズとしては149本目だ。鬼平はもちろん、密偵たちも老いた。映像化可能な作品はすべて作品化された。
スペシャルドラマは複数の原作を組み合わせたり、過去に1時間ドラマとして放送した内容にアレンジを加え、2時間ドラマとして放送するなど工夫を凝らしてきたが、それも限界。原作者・池波正太郎の「原作にないものはやってくれるな」との遺言に基づき、150作品を目を最期に終わりとすることとなった。
150本目は2016年末から17年初に前後2本として放送される予定だ。
お馴染み『鬼平犯科帳』のエンディング曲「インスピレーション」(ジプシー・キングス)。この曲がまもなく聴けなくなると思うとさみしい。