『アフガン・対テロ戦争の研究』

 

アフガンの対テロ戦争について語る多谷千香子法政大教授

アフガンの対テロ戦争について語る多谷千香子法政大教授

 

研究テーマ:『アフガン・対テロ戦争の研究』
ゲスト:法政大学教授・多谷千香子(たや・ちかこ)
9月8日@日本記者クラブ

 

アフガニスタンが旧ソ連軍の侵攻を受けたのは1979年。旧ソ連邦の崩壊を受けて89年に旧ソ連軍が撤退するまで10年間戦われた。その後は内戦が続いた。米同時テロ事件を受け2001年10月からは米軍による「不朽の自由作戦」という名の対テロ作戦が始まり、14年12月まで続いた。

15年1月からはタリバンの攻勢を防ぐため、米・アフガンの長期的な戦略的互恵関係についての条約に基づき、「自由の番人作戦」が始まった。米軍の公式任務はアフガン軍の訓練・アドバイス、残された国際テロリスト壊滅作戦だったが、実質上は地上軍として活動し、タリバンとの戦闘任務だった。

オバマ大統領は16年6月、空爆やタリバンとの戦闘任務の制限を解除する新ルールを発表。7月には彼の任期満了までは米軍の数を8400人規模で維持すると発表した。

アフガンでは1979年以来ずっと戦争が続きている。オバマ政権は辛うじて米軍を駐留させているが、任期切れとなる11月以降の見通しは不透明だ。米世論はアフガンのことを「既に忘れており、成果の上がらない戦争をいつまでも続けられない。いつか引き揚げざるを得ない」(多谷氏)情勢だ。

アフガン政権は14年9月、13年続いたカルザイ政権に代わってガニ大統領(パシュトゥーン人)が就任。アブドラ行政長官(事実上の首相、タジク人)と二頭体制となった。

タリバンは、アメリカ寄りのガニ政権に攻勢を強めており、支配地域を拡大している。パキスタンの情報機関「三軍統合情報局」(ISI)はタリバンを支援しており、「アフガンとタリバンの和解は絶望的で、アフガン内戦になる可能性が強い」(多谷氏)。

日本では米国以上にアフガンのことは忘れられている。米政府がアフガンに積極的に関与していたときは「米国対策」としてアフガン対策に従事してきたが、米国が表向きアフガンから撤退したら、一気に熱が冷めた。最初から熱が入っていなかった。ひどいものである。

『アフガン・対テロ戦争の研究』-タリバンはなぜ復活したのか-は岩波書店から16年3月25日に発売されている。6000円+税。

 

 

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