二子玉川ライズ
友人に誘われて東急田園都市線「二子玉川駅」(東京都世田谷区玉川2)に行った。二子玉川(ふたこたまがわ)は通称「にこたま」として知られ有名だが、東京の西側に住んでいる人間には縁のない場所だった。
恐らく昔一度くらいは行ったことがあるものの、全く記憶がない。新しい建物ができても、その前に建っていた建物をなかなか思い出せないのと同じように、「にこたま」に降り立っても何も記憶が思い立ってこなかった。
二子玉川ライズは水、緑、光をテーマに1982年から東急グループにより開発が進められ、2011年にはショッピングセンターを中核とした複合施設「二子玉川ライズ」が街開き。「ライズ」は「RISE」で、太陽が登るイメージを名前に託したという。
ライズを構成するのはショッピングセンター、ドッグウッドプラザ、オークモール、バーズモール、プラザモールの5つの商業施設だが、その違いはさっぱり分からない。オーバーストア状態ではないかと心配だ。
友人が案内してくれたのは駅から少し歩いた柳小路。このエリアは江戸時代から風光明媚な土地で、近代に入ってからも多摩川での川遊びのための旅館や料亭、置屋が建ち並んで賑わったという。
今は柳小路として当時の複雑に入り組んだ裏路地を再現し、京都の町屋の風情を醸す飲み屋街になっている。駅周辺の超近代的な商業エリアと何とも対照的だ。
入ったのは中国的酒場「あひるの台所」(玉川3)。手作り餃子がおいしかった。
ライズタワーには楽天が2015年6月、品川から本社機能を移してきた。「クリムゾンハウス」と名乗っている。
ライズタワーの最上階から3フロアが「二子玉川エクセルホテル東急」になっていた。東急ホテルズの3つのブランドでは高級ビジネスホテルに位置づけられている。
友人が宿泊していたホテルの部屋でワインを飲みながら夜景を楽しんだ。友人とは大学に入ったときからの付き合いだ。キャンパスで知り合った先輩のアパートを訪れたとき、同じ兵庫県出身の文学部生の彼を紹介された。あれからもう40年以上になる。
人との付き合いの密度は必ずしも時間と比例していないものの、時間の長さからにじみ出る味わいというものはある。時間だけは再生できない。古い友人を失ったときの悲しみは、付き合いが長ければ長いほどやるせなく、辛いものだ。
人は老いるに従って、思い出を食べて生きていく。付き合いが長いほど、積み上がった思い出も熟成し、味わい深い。古い友を大切にしなければならないのはこのためではないか。