「笑う故郷」

 

人間の「いやらしさ」を見せつける傑作だ

 

作品名:「笑う故郷」
監督:ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン
主演:オスカル・マルティネス
2016年アルゼンチン・スペイン作品
2016年ヴェネチア国際映画祭主演男優賞受賞

 

それはノーベル賞受賞作家の40年ぶりの帰郷から始まった。アルゼンチンの小さな市であるサラスから同町出身の世界的な作家ダニエル・マントバーニに「名誉市民」の称号を授与すると連絡があったためだ。

最近では世界中から来るそういった誘いをすべて断っていたダニエルはノスタルジーもあってその誘いを受け、40年ぶりに里帰りした。待っていたのは懐かしい友との旧交。甘酸っぱい青春の想い出だった・・はずだが、まったく人間という奴は・・・。

青春時代を過ごした田舎町、旧友たちとの昔話、初恋の相手との感傷的な再会、町の絵画コンクールの審査委員長も依頼され、故郷の英雄に熱い視線を送る若い女性の出現などもあり、ダニエルは心地よい驚きと、秘密の喜びまでも味わっていた。

しかし、ふと気付いてみると、彼を取り巻く事態は、いつの間にか思いも寄らぬ方向へ舵を切り始めていた。田舎町サラスと国際人ダニエル。彼はサラスで旧友に銃で撃たれた。

撃たれた場面からそのままバルセロナでの記者会見の場に飛んだ。最新作品は何と「名誉市民」。名誉な賞をいただくダニエルが受け取ったのは名誉なのか、それとも侮辱だったのか。その顛末すらも作品化し、自分をあざ笑うノーベル賞受賞作家ダニエル。そんな彼がいた。

 

2017年9月16日(土)~10月27日(金)岩波ホールでロードショー

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