日本最大の野菜宅配会社「オイシックスドット大地」誕生

 

「農×食」バリューチェーンの創造に向けて(会場風景)

 

『アグリビジネスジャパンの「農×食」バリューチェーンの創造に向けて』と題したシンポジウムが東京ビッグサイト東2で開催された。パネリストには東京青果経営戦略室長の久保忠博氏、ベジタリアの小池聡社長、オイシックスドット大地の高島宏平社長の3人が登場した。モデレーターは時事通信社のデジタル農業誌Agrio編集長の増田篤氏。

オイシックス(高島宏平社長)は2000年6月、「子どもに安心して食べさせられる食材」をコンセプトに、有機・特別栽培野菜、添加物を極力使わない加工食品など多様な食品と豊かで楽しい食生活に役立つ情報を、オンラインサイト「Oisix(おいしっくす)」で提供する事業を開始した。

13年7月からは、主に働く女性の「忙しくて毎日の食事に妥協したくない」というニーズに応えるため、Oisix基準を満たした安心安全な食材を使い、5種類以上の野菜がとれる主菜と副菜の2品が20分で完成する献立キット「Kit Oisix」(きっとおいしっくす)の展開を始めた。

そして16年12月、有機・無農薬食材の会員制宅配事業の草分け的存在である「大地を守る会」との経営統合について合意に達し、 今年7月1日付で社名を「オイシックスドット大地」に変更した。10月1日付で新社名に切り換える。

「ベジ太郞の家族と食べたい!野菜宅配」によると、会員数はオイシックスが約14万人、大地が10万人。合併すると約24万人となり、この分野で1位の「らでぃっしゅぼーや」(16万人)を抜いてトップに躍り出る。日本最大級の野菜宅配会社の誕生だ。

社名は変わるものの、サービスは変わらない。サービスの対象はオイシックスが30代、大地は40代後半~60代と割と高かったが、統合で幅広い世代にアピールできることが世代の狙いだ。

高島社長は1973年神奈川県生まれ。東大大学院工学系研究科情報工学修了。卒業と同時に外資系コンサルティング会社のマッキンゼーに入社。Eコマースグループのコアメンバーとして活動。2000年にオイシックスを立ち上げた。高島社長は野菜宅配業を「農業に近接しているアグリ業」と位置づけており、統合によるコスト削減能力の向上で宅配価格の引き下げに期待したいところだ。

一方、ベジタリア社長の小池聡氏はIT系出身。同氏は2000年前後に日本で起こったインターネット・ブームを代表したネットエイジやネットイヤーグループをリードした人物。当時最も著名なネット企業の1つだった。

ベジタリアンの創業は2010年。農業ICTに注目が集まる前だった。オランダや米国では「アグリテク」の可能性が問われ出した時代だった。今から7年前である。儲かれば何をやってもいいといった風潮に疑問を持ち、「ITから足を洗いたい」と思うようになったからだ。

2008年、東大の社会人向けビジネススクール「エグゼキュティブ・マネジメント・プログラム」(EMP)に学生として入学した。そこで注目したのは農業だった。人間のエネルギー源である食料の問題は環境、エネルギー、資源、医療などよりも重要だと考えた。

富士通が運営するICT活用のヒントを発信するWebサイト「Digital Innovation Lab」によると、小池氏は2009年に就農した。有機でイタリア野菜を栽培した。しかし、丹精を込めて育てた野菜は病害虫でほぼ全滅。農業の素人にありがちで、無農薬栽培でやろうとした。現実は厳しく、病気や害虫、雑草、天候との戦いだった。

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