「チャイナリスク」から「チャイナアドバンテージ」へ

 

会見する伊佐進一衆院議員(公明)

 

ゲスト:伊佐進一氏(いさ・しんいち)衆議院議員(公明党)
テーマ:科学技術と日中交流
2017年9月8日@日本記者クラブ

 

科学研究論文のコンピューター科学・数学、化学、材料科学、工学の4分野で中国が世界トップに立ったことが科学技術振興機構の調査で分かった。物理学、環境・地球科学、基礎生命科学、臨床医学は米国が首位で、主要8分野を米中が分け合った格好だ。世界は「米中2強」の時代に突入した。

日経の記事(2017年6月13日付)によると、調査は他の論文に引用された回数から影響力を調べた。トップ論文(上位10%)から米国、英国、ドイツ、フランス、中国、日本に所属する研究者を割り出した。

中国躍進の象徴はコンピューター科学。トップ論文に占める割合が2000年の3%から15年は21%に急成長した。スーパーコンピューターの性能でも13年から中国製が世界1位。16年は1、2位を独占した。60億ドル超を投じ世界最大の加速器を建設する。

急成長の背景には、潤沢な資金と人材獲得戦略があるという。研究費は00年ごろは官民合わせても5兆円だったが、14年には38兆円と急拡大。18兆~19兆円前後で推移する日本の2倍で、米国の46兆円に迫る。先進国で学んだ中国人研究者を呼び戻しているほか、留学や派遣を通じて海外の研究人脈と太いパイプを築く。

トランプ米大統領は科学予算を大幅に減額する方針だ。中国の存在感は増すばかりだ。

伊佐氏は東大で航空宇宙工学を学び、1997年に科学技術庁(現文部科学省)に入省。2007年から10年にかけて中国大使館に一等書記官(科学技術アタッシェ)として駐在し、『「科学技術大国」中国の真実』(講談社現代新書)を書いた。大使館員による現場報告で、「日本の技術力はすでに中国に負けている!?」と銘打ったセンセーショナルなリポートだった。

「中国での科学技術の発展なんて、多くの人が疑いの目で見ていた時代。わたしは現場を回って抱いた感覚は、いつか日本と並び抜いてしまう日も来るとの強烈な危機感」を抱いていたが、「10年の歳月が流れ、それがついに現実のものとなってしまった」と会見で嘆いた。

伊佐氏は現在、公明党の科学技術委員会の事務局長を務める一方、超党派国会議員による日中次世代交流委員会事務局長として訪中を重ねてきた。つい最近も訪中し、改めて中国の科学技術の発展ぶりに驚かされたという。

「日中関係は良い時も、そうでない時もあったが、科学技術交流だけは途切れなかった。日中関係はエモーショナルからシステムになるべきだ」と強調した。

中国はスマートフォンを使った電子決済やタクシーの予約などIT(情報技術)の活用が急速に発展する一方、「インターネット安全法」が6月に施行され、厳しいネット管理・統制がさらに強められた。外国企業が中国で蓄積したデータの国外持ち出しに規制をかけたほか、当局のインターネット接続規制を逃れるために使われてきた仮想プライベートネットワーク(VPN)の取り締まりも厳しくなっている。

そんな中国側の情報管理の厳しさを指摘しながらも、中国とは「科学技術面での協力を推進しなければならない」と強調するのが伊佐氏だ。中国では「シェア自転車」がその1つ。利用者はスマホのアプリで解錠し、乗り捨てたいところで降り、鍵を閉めれば電子決済される。顧客がどう自転車を使ったのかビッグデータが蓄積される。

チャイナリスクを批判するばかりではなく、チャイナアドバンテージもある。中国敵視政策に組みしない公明党議員らしい指摘だった。

 

 

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