”異常な金融政策”でバブルが本格化

 

分かったような、分からなかったような話だった

 

ゲスト:松村嘉浩(まつむら・よしひろ)氏
テーマ:2018年経済見通し「アベノミクスでバブル本格化」
2018年1月15日@日本記者クラブ

 

松村氏は外資系投資銀行で国債のトレーダーをやっていた実務家。経済学者でもエコノミストでもない。アベノミクスの金融政策は実務家から見ればとんでもない内容だと断罪した。古典派の経済学はマネーを考慮に入れないマネー抜きの経済学であり、実務家はマネーだけの経済学。その間を埋めたのが話題の『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか』(ダイアモンド社)を書いた理由だと述べた。

松村氏は、現在について、我々が過去経験したことのない「大変化の時代」に入っていて、机上の空論としか思えない金融政策が行われていることの実態だと主張した。

2018年の目先はどうなるのか。2017年の総選挙が歴史的なターニングポイントになった。87年と同じ状況になっており、89年のようなとんでもないバブルになる可能性もあると見ていると述べた。

また、インフレが起きないとも述べた。だれもがこれはおかしいと指摘し、株価が上がる中で長期金利も上がらない状態が続いている。過去の説明がつかない時代に入ったことの表れであると指摘した。松村氏の話はまだまだ続く。

・なぜインフレが起きないのか。インフレは貨幣的な現象で、中央銀行はそもそもインフレをつくれない。結論を先に申し上げていく。黒田日銀総裁は2%インフレをつくると言ったが、できないまま泥沼に陥っている。

・産業革命以降、成長するのが当たり前だという世界で生きているが、全く異なるデジタル革命による大変化の時代に入っている。産業革命は物理や化学の革命だった。失業したのは馬だったが、デジタル革命は情報の革命で、ヒトが要らなくなることが構造的に発生する。

・自動化が行われる分野が増えてきて、高付加価値の仕事に行けなくて、中間層のホワイトカラーが下に落ちていく。極端な2極化が発生する。今後ももっと起きる。

・これだけの変化が起こってくると、社会が不安定化する。どう子どもを育てればいいのかビジョンが無くなる。これまではビジョンがあったが、それが無くなる全く新しい時代に入ってくる。人口減少は低成長、デフレを生む。これを皆は気付いていない。

・中銀はファンド(資金)みたいになっていて、先頭に立っている。本当なら問題が起こったときに需要を供給するのが本来の仕事で、自ら先頭に立って戦う仕事をすべきものではない。どこにいかざるを得なくなったのが現状で、そのことによって問題は解決しない。

・現状の金融政策は、端的に言えば資産を買い占めて、資産価格をつり上げているだけ。中銀が絡むものは上がるが、それ以外は上がらない。資産を持っている人には良いけれど、一般は困っている。バブルだ。いつか必ず潰れ、政策の副作用が顕在化する。

・中央銀行がこれだけのことをやっている。政策コストはただではない。出口から出ないと評価できない。今やめて株価が下がれば、やった意味がない。副作用だらけ。国民の中では「分からない」と言ったところが現状だ。

リフレ派の経済政策は完全に「間違いだ」と断言する。政治は時代の変化に柔軟に対応できない。一番遅れてしまう。どうしても過去の処方箋に頼らざるを得ない。負の分配などの痛みを伴うことはできない。

・国民は政策コストが分からないから、一番都合の良い大衆迎合政策が「日銀を使う」ことになっている。これが現状だ。

・批判すると、「対案を出せ」という意見だ。しかし、残念ながら即効性のある対案はない

・産業革命のときも、国家が教育、インフラ、医療、社会保険を高齢者、貧困者、失業者などに提供する現在の社会民主主義モデルに長い時間がかかった。デジタル革命によって起きることは雇用の喪失。働かない人々が食べていける制度を構築することが答えであると同時に成長を前提とした社会保障を削減するしかない。しかし、そのような制度がどうすれば機能し、持続可能なのかを考えるのは非常に難しい。

問題は日本が問題の最先端を走っていること。人口削減。そして、日銀が世界で一番、突出して大きなリスクをとっていること。日銀がこれだけやっているので世界が回っていると言っても過言ではない。世界中の長期金利がこれだけ低く回っているのは日銀のおかげというイメージを持たざるを得ないのは事実だ。

世界中が日本の壮大な実験の成果を見ている。世界は心配したらどうしようかと考えられる余裕がある。明確な対案は存在しない。しかしながら、だからと言って間違えた薬を飲んで目先をごまかしても、あとで副作用に苦しむだけ。

・失敗したときのリスクを考えて政策を考えるべきであり、日本が怪しい薬の実験台になってしまうことは避けなければいけないのではないか。

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