試写会:『閉鎖病棟』で紡ぎ出される優しき人間たちのドラマ

 

ーそれぞれの朝ー

 

作品:『閉鎖病棟』(ーそれぞれの朝ー)
監督・脚本:平山秀幸
原作:帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)『閉鎖病棟』(新潮文庫)
キャスト:笑福亭鶴瓶(生きながらえた元死刑囚の梶木秀丸)
綾野剛(幻聴に苦しむ元サラリーマンのチュウさんこと塚本中弥)
小松菜奈(DVを受ける女子高生の島崎由紀)
2019年10月8日@日本記者クラブ
11月1日ロードショー開始

 

ストーリーはシンプルだ。

「長野県のとある精神科病院。死刑執行が失敗し生きながらえた秀丸。幻聴に悩まされるチュウさん。DVが原因で入院する由紀。3人は家族や世間から遠ざけられながらも心を通いあわせる。

彼らの日常に影を落とす衝撃的な事件はなぜ起きたのか。それでも「今」を生きていく理由とはなにか。法廷で明かされる真実が、こわされそうな人生を夜明けへと導くー。」

原作の『閉鎖病棟』を書いたのは帚木蓬生氏。東大仏文科を卒業し、TBSに勤務しながら2年で退職し、九大医学部に入り直し、現在も精神科医を務めている。

山本周五郎賞を受賞した本作は1995年に発売され、丸善お茶の水店に掲げられた「感動のあまりむせび泣きました・・・」というPOPが起爆剤となり、累計90万部を超すベストセラーになった。この作品を読んで秀丸の自己犠牲に感動した平松秀幸監督が初めて脚本を書いた。

秀丸はどん底で苦しいのに、チュウさんや由紀の痛みを思いやる。自己犠牲は誰にもマネできない。平松監督はこれを映画化できないかと思い、実現するまでに11年もかかったという。

秀丸は嫁を殺して死刑になった男。しかし刑の執行が失敗し生きながらえ、今は精神科病院にいる。この秀丸を今や国民的落語家とも言える笑福亭鶴瓶が演じた。7キロも減量し役作りに励んだ。

作品の舞台は独立行政法人国立病院機構が運営する専門医療施設「小諸高原病院」(長野県小諸市)。この病院が協力している。「精神科病棟独特の空気感はセットでは作れません」と美術担当の中澤克巳氏は言う。彼は平松作品の常連だ。

帚木蓬生氏は「精神科病棟には長期入院の患者がいますが、終の棲家ではないこと、いずれはここから飛び立っていくのだということを訴えたかったのです」と書いている。

普段は物静かなチュウだが、病気を背負っているので乱れるときもある。幻聴を起こして苦しむ彼はすごかった。病院内で逮捕された秀丸にすがり寄って、「おれ退院するんだよ」「おれ退院するんだよ」と何度も言う迫力は半端じゃなかった。

由紀は高校生だったが、義父・島崎伸夫からDVを受けて入院する。秀丸やチュウさんと心を通わせ、明るく生きようとしていた。加害者・秀丸の事件が院内で起こるまでは。

居場所をなくした人々が、
ここで出会い、
ここで癒やされ
ここからまた自らの人生へ
旅立ってゆくー

主題歌「光るソラ蒼く」(ビクターエンタテインメント)を韓国人の歌手Kが歌っている。

 

 

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