クラウドとEVには膨大な電力が必要=「AI革命の資本家こそわが責務」と孫正義自然エネルギー財団会長

自然エネルギー財団会長の孫正義氏

 

■「REvision2022:自然エネルギー転換を加速する」をオンライン開催

 

公益財団法人自然エネルギー財団は3月2日、「REvision2022:自然エネルギー転換を加速する」を開催した。同財団は2011年3月11日の東日本大震災による福島第Ⅰ原子力発電所事故を受け、ソフトバンクグループの孫正義社長が同年に設立し、会長に就任した。理事長にはスウェーデンのエネルギー庁長官だったトーマス・コーベリエル氏が就任し、現在も務めている。

財団は「自然エネルギー100%」の未来を主張しており、「脱炭素社会」の実現を標榜している。EV自動車時代の到来を見据え、自然エネルギーによる世界の到来を目指した活動を展開している。

 

■「AI革命の資本家になる」

 

財団は第2部で「10周年記念企画を構成し、孫正義会長が10分程度あいさつした。孫氏は現在ソフトバンクグループ会長兼社長。ウィキペディアによると、同氏は「日本トップの資産家であり、2021年のフォーブス世界長者番付で世界第29位を占めている。保有資産額は2021年3月5日時点で454億ドル(約5兆円)」といわれる。

孫氏は「現在の世界を引っ張っているのはAI革命(情報革命)であり、その先頭を走っているのがクラウドコンピューティングと電気自動車(EV)」と位置付け、「自分は世の中を変える情報革命の資本家になる」との強い意志を表明した。

「双方とも莫大な計算をするために膨大な電力が必要だ」と指摘し、すばらしい未来を作るためには「石油や石炭ではなく、自然エネルギーがどうしても不可欠であり、それをやり遂げることこそが自分の責務である」と指摘した。

孫氏は自分の事業を行っていく上で哲学を持ち、それを具体化しながら事業を推進している。哲学がなければ事業は進まない。このことを少なくても理解している数少ない事業家の1人ではある。

 

■「世の中が追いついてきた」

 

・原発事故をきっかけに使命感から自然エネルギー財団を設立した。世の中のコンセンサスはまだできていなかった。日本の国家や一般的な国民は『自然エネルギーと言ってもいったい何のことなのか』と言っていた。

・これまでの10年は、自然エネルギーはすばらしいが、高いから導入できなかった。しかし安くなってなおかつサステイナブルな自然エネルギーと言うことならば、もうこれ以上抵抗する理由がない。送電のインフラがまだ問題ではあるが、かなり改善してきている。

・これからの10年はどうか。世界では自然エネルギーが中心でなければならないということが完全に定着してきている。サステナビリティー、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からもGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)など大手IT関連企業がこぞって具体的な期限、たとえば「2030年はカーボンゼロにする」などと期限付きで打ち出してきている。

・社債すら評価されない状況になってきている。投資家も企業もメディアも国もみなこぞって期限が必要であることが世界のコンセンサスになってきている。「われわれは10年前孤軍奮闘していたが、やっと世の中が世界中がそういうものになってきた。

 

■「世の中を変える」のが資本家

 

・私は、「AI革命が人々を幸せにするんだ」という信念の下、そこに事業を集中している。情報革命の資本家になる。AI革命の資本家になる。単なる投資家ではない。世の中を変えるんだと(標語を)私自身は掲げている。自分の使命だと思っている。

・投資家と資本家の決定的違いは何か。投資家はお金を儲けるために投資活動を行う。お金を作りにいくのが投資家だ。資本家は未来を作る。未来のためにリスクをとって新しい世の中を作る。人々がより幸せになる世の中を作る。

・リスクのある世界でも打って出る。これが資本家の役割だ。私はそう思っている。そういう意味で情報革命の資本家、AI革命の資本家になるのが私の本業である。

・情報革命、AI革命の中で最も大きな進展をしているのはクラウドコンピューティング(クラウド環境でコンピューティングサービスを利用すること)の世界。自動車がEVとして様々な自動運転機能を持って事故のない交通網、交通機関を作るというのが最先端の取り組みだ。

 

■ビットコインだけでスウェーデン1国分の電力必要

 

・たとえばビットコインを増やしていくためのマイニング(計算)のために使うクラウドコンピューティングの電力は昨年、スウェーデン1カ国の総電力需要を超えてしまっている。ビットコイン1つだけでそうだ。

・クラウドコンピューティングはビットコインだけでなく自動翻訳だとかeコマースなどさまざま。30年間で350倍の電力が必要だという状況だ。電力の需要はまだまだ増える。

・そういう状況のときに石炭火力を使うわけにはいかない。自然エネルギーに変えていかないと地球が破滅する。自然が破滅する。こういう状況だ。

 

■EVは走るだけではなく計算するにも電力がいる

 

・もう1つカーボンをたくさん食っているのは自動車だ。オイルが電気自動車に変わる。電気自動車の電力は何で作られているのか。石炭火力に頼っているのはオイルは燃やさないが、石炭は燃やす。これではカーボンニュートラルにならない。電気を起こす電力を石炭火力から自然エネルギーに変えていかなければならない。

・EVに必要な電力需要は30年間で300倍必要になるとの予測が出ている。これから世界中が「ガソリン自動車の出荷禁止」に入っていく。EVが単に走る自動車ではなく、計算する自動車、自動運転としてまさにスーパーコンピューターにタイヤが4つ付いている状態になる。走行距離に必要な電力だけでなく、自動運転で計算するのに必要な電力がよりたくさんいることになる。

・AI革命で人々が事故のない社会、人々がより幸せになる時代にはより電力が必要だ。これを石炭火力、オイルのエネルギーから自然エネルギーに変える。まさに人々の未来を守るために、人々の未来を作るために、子どもたちに誇れる豊かな社会を作るために何としてもわれわれの責務としてやらなければならないと考えている。

・自然エネルギー革命はまだまだ始まったばかり。ようやく世界のコンセンサス、日本の国内でもコンセンサスができてきている。

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