『アラビアのロレンス』

(パンフレットに閉じ込まれている写真「ロレンスの駱駝騎乗兵の背景となった刻々と色の変わる砂漠」)

1988年、コロムビア映画会社製作のアメリカ映画。デービッド・リーン監督。「完全版」、上映時間が227分、何と4時間近い大作で、観るのは体力勝負である。インターミッションの入る映画を観たのは初めてのような気がする。2月11日、新宿高島屋スクエアの「テアトルタイムズスクエア」は長蛇の行列。これにまずびっくりした。

 自伝『知恵の七柱』を基に、アラブ民族を率いてトルコと死闘を繰り広げた英国将校T・E・ロレンスの苦悩と挫折を壮大なスケールで描いたオスカー作品賞受賞のスペクタクル歴史劇。歴史から見れば、デタラメ映画、文化的見地から見れば、名作とのレビューを読んだ。

 むしろ歴史家に近いジャーナリストの立場からすれば、愚作に違いない。中東の歴史を単純化し過ぎているし、英国の謀略外交を担った面から考えても、単純にアラブを解放した英雄視するのは問題がある。史実に忠実ではない。

 逆に壮大な砂漠を見事に切り取った撮影や引き裂かれたロレンスの苦悩を演じたピーター・オツゥール、アラブの盟友アリ酋長を演じたオマー・シャリフや勇敢なハウェイタトの酋長アウダに扮したアンソニイ・クインなどの演技はすばらしい。歴史家と芸術家の双方の眼を持って鑑賞するのが一番なのかもしれない。

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