「日本農業は崩壊する」


      (石破茂自民党政調会長、BS朝日「激論!クロスファイア」)

 環太平洋経済連携協定(TTP)をめぐる議論がよく分からない。そもそも情報量も圧倒的に足らない。菅直人首相は24日行った施政方針演説で、「明治の開国」と「戦後の開国」に続く「平成の開国」への具体的取り組みとして、TTP推進を挙げた。

 菅首相は「米国をはじめとする関係国と協議を続け、今年6月をめどに、交渉参加について結論を出す」と強調したが、国内では農業団体が貿易完全自由化により「日本農業は崩壊する」と加盟反対運動を展開。与党民主党、野党自民党も党内がまとまらず、このままでは交渉への参加自体を表明できない可能性も高い。

 交渉ごとだから、たとえ日本の国内が「参加」でまとまったとしても、相手があること。向こうから愛想を尽かして、参加をお断りされることだって大いにあり得る。なぜこんなことになってしまったのか。一番悪いのは国家の将来像を明確に描けない想像力の欠乏した政治家だろうが、もっと悪いのはやはり、そうした政治家を育てた国民に違いない。

 石破(いしば)氏は自民党政権で農相(防衛相も)を務めた農政通。鳥取県八頭(やず)郡八頭町出身。それだけに農業の将来に対する危機感は強い。

 農水省によると、農林水産基本データ(平成23年1月1日現在)は以下の通り。

国内総生産(GDP)   474兆0402億円(平成21年度)
農業総生産          4兆4295億円(平成20年度速報値)
農家人口         698万人(平成21年度)
 うち65歳以上     238万人(同)、34%

 日本農業に後継者が育たず、65歳以上の高齢化率が一段と高まっていることは、石破氏の言うとおり、「農業がもうからない」からだ。やる気があっても農地と資金が、そうしたやる気のある人に集まる仕組みができていない。作った仕組みも、やる気のある人を育成するのではなく、逆にやる気のない人を支援する制度。これでは「TTPに入る、入らないにかかわらず、農業は崩壊する」とも指摘する。

 農地の集約が実現できないネックとして石破氏が指摘するのは2反や3反(1反=100㎡)程度の小規模な第2種兼業農家の農地保有だ。それを許しているのは土地保有コストの安さ。保有していてもコストが掛からない上、いつの日か道路や建物用地として高額に売れるとなると、転売期待から農地を売らないのは当然だという。

 その通りだと思う。その辺りをどう突破していくか。産業として農業をどう確立していくのかという問題と、多面的機能を持つ農村をどう支えていくかの地域政策として考えていかなければならない。単なる賛成、反対ではなく、それこそ、日本をどういう国にするのかについての双方の「熟議」が必要だ。

 朝鮮半島では砲弾が飛び交い、今現在エジプトでは反政府デモが燃え盛っている。どこの国も大変だ。生きるか死ぬかの戦いを強いられている。政治指導者の本物の指導力が今ほど問われる時期はない。その政治家を馬鹿にするのではなく、きちんとチェックしていくことが重要だ。

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