「和食の中心―米と魚」

 

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6月、11月の年2回開かれている東京大学農学部公開セミナーは今回が48回目。テーマは「食卓を彩る農学研究」だった。10年ほど前から参加しており、とりわけ11月は銀杏見物も兼ねたお気軽出席だ。農学研究の最先端の一端に触れられる貴重な機会だ。

 

潮秀樹教授(水圏生物科学専攻)

潮秀樹教授(水圏生物科学専攻)

 

潮秀樹教授のトピックスは「和食の中心~米と魚」。和食の基本形は一汁三菜。中心の1つは米。米ハタンパク質や脂質などの栄養素のほか、ビタミンEやトコトリエノール、ガンマアミノ酪酸(GABA)、ガンマアリザノールなどの機能性成分を含む。

また、魚にもエイコサペンタエン酸(EPA)や類似した脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)、アミノ酸の一種であるタウリン、抗酸化性が強いアスタキサンチンなど多くの健康機能性成分を含まれる。

世界で和食がブームになっているのはこうした和食の良さが評価されたものだが、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されたのは「日本の伝統的な食文化」としての和食だが、今われわれが食べている現在の「日本食」は今回登録された和食とはずいぶん違う。

和食は季節感、地域性、行事性を重視したものだが、現代の日本食はそれらを喪失している。登録されたことにより、「和食の持つ伝統的な食文化」を維持・継承していく責任を負ったことになる。登録されたことで終わりではない。

潮教授は「健康機能性に富む『米と魚』を中心に添える和食はバランスが非常に良く、日本を長寿国にする上で一役買っている」としながらも、大きな欠点も持っていると指摘した。醤油、味噌、漬け物など貯蔵性を高めるために用いられる「食塩の量」がそれだ。

世界保健機関(WHO)は一日の塩分摂取量を5g以下が望ましいと勧告しているが、日本の平均摂取量は成人男子で11gと倍以上。8~9gが限界で、それ以下なら病院食。これをいかに克服するかが日本人の課題だ。

そこで期待されるのが「だし」。1908年に池田菊苗氏が昆布だしのうまみ成分として「グルタミン酸ナトリウム」(umami)を発見した。塩分が足りないところにだしを入れるとうまみを感じる(味覚錯誤)。だしをしっかり取ると、塩分を少なくできる。こういう話だった。

 

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