友人の死

 大学時代の友人が亡くなった。今週末、もう1人の友人と3人で久しぶりに山登りをしようと計画していた矢先だった。長野県佐久市の山小屋に一泊し、私の「送別登山」にする趣向だった。本当なら、今時分、3人で他愛のない話に興じていたはずなのに・・・。

 1カ月前から何度か電話をしたが、その都度「使われていません」とのアナウンス。友人は1人暮らしだった。おかしいな、と感じつつ、他に連絡のしようもなかった。それで今年もらった年賀状の住所に葉書を出した。携帯電話の番号を書き、連絡をくれるよう書いた。

 連絡はあった。しかし、彼からではなく、妹さんからだった。転送された葉書を見て掛けてきたのだった。「兄は亡くなりました」。お酒を飲んで痰を詰まらせ、肺炎を起こしたのが直接の死因だったという。3月21日の午後3時半ごろだった。

 1週間前の3月14日午後1時半ごろ、彼から携帯に電話をもらった。「中国共産党がどのようにして権力を握ったかを暴いた『暴風10年』は非常に良い本だ。再出版すれば売れると思うので、それを伝えたかった。それと、あと山へ行こう。それが言いたくて君に電話した」。

 これまでも何度か、彼からは電話をもらった。いつも唐突だった。いつも会議中などで忙しくしており、十分相手をしてやれなかった。それが不思議に3月14日はゆったりしていた時間で、しばらく話をできたのがせめてもの救いだった。

 いつも、いつも勉強していた君。何年も何年も本を読み続けていた君。今年の年賀状で、「長年ヨガをつづけ、ようやく”正常体”にもどってきました。体の動きが自然にできるということです。では」と書いて寄こした君。貴兄の蔵書は私が引き取ります。

 4月22日の午後、仲間3人と貴兄の墓にお参りしました。ご両親と同じお墓に入っていましたね。お線香と一緒に、妹さんが君の好きだったタバコに火を点けて、差し入れをしていましたよ。さぞ、うまかったことでしょう。墓地にはもうつつじが咲いていた。どうか、安らかにお眠りください。合掌。

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