2016年1月 のアーカイブ

信濃くるみ

カテゴリー: 東京日誌Ⅲ, 食/食堂/レストラン

2016/01/30  11:29


 

ポケットに入れておくといろいろ便利…

ポケットに入れておくといろいろ便利…

 

この頃はいつもポケットに胡桃(くるみ)を入れている。冬だから外出するときはコートを着る。ということもあって、右ポケットと左ポケットに2つずつ。1つずつでもいいが、2つならより効果的に手で握りしめてごしごしやれば、握力向上の練習になる。

お腹が空けば、柱に少し強くぶつけて割って、中から実を取り出し、それを食べる。胡桃が大きいと、実もそれだけ大きい。1つだと物足りないが、2つ、3つと食べると、結構腹持ちする。

昔、チャールズ・ブロンソンだったと思うが、アメリカの西部劇かアクションドラマだったか正確には思い出せないが、手に握った胡桃を壁に投げつけて、割った胡桃の実を食べるシーンをどういうわけか覚えている。胡桃はああいうふうにして割るものだと思った。

胡桃を見ると、あのときのシーンを思い出す。昨日も前橋からの帰途、金属製の壁や柱に胡桃をぶつけて実を食べた。

食べているのは「信濃胡桃(くるみ)」。暮れに軽井沢生まれの知人から送られてきた。栽培に適した長野県が特に力を入れており、浅間山麓が全国一の産地になっているという。信濃胡桃は外来2種の交配から生まれた優良品種で、そのほとんどは上田市と小諸市に挟まれた東御市(とうみし)で産出されている。

胡桃は雨が少なく、日照時間が長い温暖な気候が必要だが、東御市の気象条件は最もふさわしいようだ。

群馬県庁

カテゴリー: 旅行/移動/街歩き

2016/01/29  23:57


 

そびえ立つ群馬県庁ビル

そびえ立つ群馬県庁(前橋市大手町1)。高さ153.8m、32階(127m)の展望ホールでは夜景も楽しめるとか

 

21階から外を眺めるとこんな感じ・・・

21階から外を眺めると、眼下に利根川が流れていた

 

丸で川中島に浮かぶような・・・

丸で川中島に浮かぶような・・・。橋の向こうに見えるのはヤマダグリーンドーム前橋(前橋市立多目的アリーナ)

 

22階から市街を望む

22階から市街を望む

 

雨に濡れるJR上毛線前橋駅

雨に濡れるJR上毛線前橋駅(垂れ幕には『大河ドラマ「花燃ゆ」ゆかりの地、時代を築いた二人 至誠の人 文と素彦』)

 

国立研究開発法人・農業生物資源研究所(茨城県つくば市)と群馬県の主催による第8回公開シンポジウム「カイコ産業の未来」―高機能シルクの実用生産に向けて―に参加するため群馬県前橋市に自腹出張した。

フリーランスだから自腹なのは当然だ。自腹だから、なるべく安上がりにするため電車で行った。会社持ちだったら、当然、大宮―高崎間は新幹線を使う。時間の節約になる。車で行くことも考えたが、大雪予報が出ていたので断念した。現地は雨だった。

東京練馬区の自宅から前橋まで3時間もかかった。往復6時間。新宿湘南ライン(大宮―新宿―大船)だから、せめて大宮以北は快速だと思っていたら、各駅停車だった。大宮以北は宇都宮と前橋まで直通運転が行われていた。埼玉県の市名には詳しくなるが、とにかく時間はかかった。

前橋に行く前も、帰ってからも初めてだと思っていたが、このブログを書いているうちに20年以上も前に1度行ったことがあることをひょいと思い出した。会社勤めで商品先物市場を担当していたとき、前橋乾繭取引所を訪れたことがあった。

群馬県は養蚕業が栄えた土地で、その関係でカイコが作った生のマユである生繭(せいけん)を熱処理により乾燥した乾繭(かんけん)の先物取引が1998年まで前橋で行われていた。同年に横浜生糸取引所と合併し、横浜で2004年まで取引が続けられた。しかし、その取引も終わった。

群馬県は生物研が2000年に開発に成功した遺伝子組み換えカイコを使って新たなカイコ産業の復活を目指しており、その成果を発表する公開シンポを毎年開催している。

県内では「富岡製糸場と絹産業遺産群」が14年に世界遺産に登録された。これらは過去の遺産だが、県は遺伝子組み換え技術を活用して新たなカイコ産業の育成に取り組んでいる。シンポも大変活気があった。

 

 

『カイコ産業の未来』シンポ

カテゴリー: 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

  22:47


 

蛍光絹糸制作した帯

蛍光絹糸で制作した帯

 

遺伝子組み換えカイコの繭と生糸

遺伝子組み換えカイコの繭と生糸

 

国立研究開発法人・農業生物資源研究所(茨城県つくば市)と群馬県は共催で、第8回公開シンポジウム「カイコ産業の未来」―高機能シルクの実用生産に向けて―を群馬県庁2階ビジターセンターで開催した。

同時にシンポのタイミングに併せて1階県民ホールで行ったのが世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」展特別展示。伝統技術と先端技術が融合した光るシルク(着物、帯、ショールなど)やクモ糸シルク、カイコにより作り出された検査薬や化粧品などを出展した。

『アリスのままで』

カテゴリー: 映画/テレビ/舞台

2016/01/28  21:37


 

アルツハイマー症患者として講演するアリス(予告編から)

アルツハイマー病患者として講演するアリス(予告編から)

 

作品名:『アリスのままで』(STILL ALICE)
監督:リチャード・グラツァ&ウォッシュ・ウェストモアランド
主演:ジュリアン・ムーア(アリスとして)(第87回アカデミー賞主演女優賞受賞)
2014年アメリカ映画@ギンレイホール

「言語学者のアリスは家族にも恵まれ、充実した人生を送っていたが、言葉に詰まったり、帰り道が分からなくなるなど異変が起きる。診断の結果は家族にも遺伝する若年性アルツハイマー病だった・・・突然、病を宣告され、恐怖と闘う女性と支える家族の葛藤と絆を描く人間ドラマ。

「エルネオス会2016」

カテゴリー: 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2016/01/25  23:19


 

見事に黒装束集団だった

見事に黒装束集団だった(壇上は元外交官の東郷和彦氏)

 

寄稿しているビジネス情報誌『エルネオス』の新年懇親会に出席した。2年ぶり2回目。参加者は寄稿しているジャーナリストと同誌に広告を出稿している企業の広報担当者など。90人強が集まった。

会場は一橋大学関係者の夜のクラブとも言える如水会館(千代田区一ツ橋2)。東京會舘が運営している。2階と3階に4つずつパーティールームがある。1階にフランスレストラン、3階に日本料理の店が入っている。

 

認知症対策と寝た切り防止のために「自転車を」と話す都市交通評論家の亘理章氏

認知症対策と寝た切り防止のために「自転車を」と話す亘理章氏

 

いろんな人がいろんなことを研究・調査したり、それを仕事にしている。そんな人と出会えるパーティーは面白い。会場に来るまでは存在すら知らなかった人と、たまたまその場で話をできる。

もちろん、参加者すべてと話をできるわけではない。たまたまタイミングが合った人と話をする程度だが、それでも、どんな人かも知らなかった人とちょっとだけでも話をすると新しい発見や気づきがある。

会場で1人の人を見つけて、なるべくこちらから話し掛けるようにしているが、名札がよく見えない場合もあるので、話し掛けるきっかけがなかなか難しい。ちょっとしたコツもいる。しかし、話し掛けられて迷惑がる人はまずいない。そんな人は大体パーティーに出てこないからだ。

便利なのは壇上でスピーチした人。どんなことをしているのか分かっているので、一言二言話し掛けたいことがあれば、近寄っていけばいい。最低でも名刺交換ぐらいはできる。

お開きのために壇上に上がったのが都市交通評論家の亘理章氏。トヨタ自動車の調査部に長くいて、自動車メーカーの視点から都市交通を研究してきたという。名刺には早稲田大学電子政府・自治体研究所客員研究員、NPO法人自転車活用推進研究会理事とあった。

検索してたまたま見つけたのは『自転車・バイク・自動車駐車場 パーキングプレス』発行人・森井博氏との対談(2013年5月号)。普段気が付かなかった点が指摘されていて興味深かった。

・ヨーロッパで行われた社会実験で象徴的な例は、”歩車分離政策”。ヨーロッパもかつて日本と同じように、モータリゼーションが普及し、大気汚染や交通事故などが深刻化していた。そこで、歩行者と車の空間を完全に分けてしまった。しかし、自動車の侵入・運行を制限した結果、失敗。1990年代後半から2000年代初めにかけて”歩車分離”から”歩車共存”に舵を切った。

・”歩車共存”とは道路を自動車、自転車、公共交通、歩行者などでシェアすること。そのために①歩行者②自転車③バス、LRTなどの公共交通④自動車―の優先順位を付けた。一般的に人が移動する時には幅0.75m、自転車は幅1mが必要。道路再配分の際に、人と自転車のスペースを先に確保した。

・日本はヨーロッパの考え方と真逆で、住宅街に幅員5mの生活道路があった場合、まず中央に4mの車道をボーンと確保してしまう。そして両脇を0.5mずつ取って、それを路側帯にする。同じ”歩車共存”と言っても、優先順位が逆転すれば、交通弱者である歩行者、自転車にとっては危険な状態が生まれる。

・市民重視の施策というのは、何歳になっても元気に歩いて移動できるような環境を整える施策であり、つまりは社会福祉政策。その一環として交通政策がある。歩けなかったとしても何らかの移動手段で普段の場所から違う環境に身を移せば、人間の脳は刺激を受け、活性化するようにできている。環境が変わり、頭に入る情報が変わることで人間は元気になれる。多くの乳幼児は乗り物にあこがれや興味を示すが、あれは人間のDNAに”動くことで能が活性化する、能力が拡張する”とすり込まれているからではないか。

さらに検索していくと、欲しかった情報を見つけた。「自転車サイズのまちづくり報告書2010」(茅ヶ崎市商店会連合会サイクルライフ研究委員会)の小林成基氏(自転車活用推進研究会理事長)による「まちが得する自転車活用」

・自転車は太ももと腸腰筋、立ち上がる時に使う筋肉が鍛えられる。腸腰筋は20歳がピークで下がっていく。お年寄りが猫背になるのは腸腰筋が弱るせい。年齢にかかわりなく、足を高く上げて動かすことが重要。特に女性は健康と美容にいい。寝たきりにならない、立ち上がれる筋肉を作る。

・血管年齢を若く保つ。歩くと血流は2.5倍になる。自転車を軽くこぐと10倍になる。ちょっとした山坂を走ると20倍になる。

・サドルが低すぎると腰を痛め、足が太くなる。前から乗って前から降りる。これが自転車の乗り方です。

『彼は秘密の女ともだち』

カテゴリー: 映画/テレビ/舞台

2016/01/22  23:43


 

『彼は秘密の女ともだち』(ギンレイホール)

『彼は秘密の女ともだち』(ギンレイホール)

 

作品名:『彼は秘密の女ともだち』(Une nouvelle amie  、The New Girlfriend)
監督・脚本:フランソワ・オゾン
原作:ルース・レンデル
キャスト:クレール(アナイス・ドゥムースティエ)
ダヴィッド/ビルジニア(ロマン・デュロス)
制作年:2014年フランス映画@飯田橋ギンレイホール

 

今や常識的な価値観を持つ人間が肩身の狭い思いをしなければならない時代になってきたようだ。オゾン監督も自分がゲイであることを公表しているし、この作品のテーマも異性装者。ストレートな自分がむしろ普通の人間ではないような気分にさせる時代は悪いような、良いような・・・。段々自分が分からなくなってくる。

「子どものごろからの大親友ローラを亡くし、哀しみに暮れるクレール。親友の夫ダヴィッドと生後間もない娘の様子が気になり家を訪ねてみると、親友の服を着て娘をあやすダヴィッドの姿があった・・・」

正直言って、このシーンはショックだった。ダヴィッドは涙ながらに「ローラを求めるあまりやってしまった」と説明するものの、それは言い訳で、彼は子どもの頃からこっそり母親の下着を身に付けるのが好きな、生来の異性装者だった。

クレールはハンサムなサラリーマンのジルと2人で暮らす平凡で貞淑な主婦だった。その彼女が女性の服を着たいというダヴィッドの告白に戸惑いながらも、いつしか彼を女性として受け入れるようになり、新しい女ともだちのビルジニアとして絆を深めていく。クレールもまた、ビルジニアの影響で自分らしく生きることの素晴らしさに気付く。

「ありのままの自分を受け入れ、自分らしく生きることの素晴らしさを歌い上げる人生の賛歌!」というのがうたい文句だが、そんな人ばかりが増えてくると、世の中の秩序は狂ってくるに違いない。

クレールの場合は、ローラという大親友がいたがゆえに、異性装者のダヴィッドの登場によって、変わっていくことになった。こういうシチュエーションは誰にでも訪れるわけではなく、普通の人は、世間一般の倫理観に沿って生きていく。

幸か不幸か、世間一般の倫理から逸脱して生きることになってしまった人がいるのも現実。善悪の問題ではなく、ホモセクシュアルにしても、レスビアンにしても、そういう人生を意識的、無意識的にかかわらず選んでしまった人たちもいる。そういう存在を排除するのではなく、社会として認めることが必要なのかもしれない。

そうでなくても生きづらい時代に、自分らしく生きることは楽ではない。それでもあえてそれに挑戦しようとする人たちはやはり評価しなければならないのだろう。

「石川組製糸」の変遷と社会貢献

カテゴリー: 講演会/シンポ/セミナー/勉強会

2016/01/19  23:45


 

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石川組製糸について講演する染井佳夫氏

 

国立大学法人東京農工大学(東京都小金井市)付属の科学博物館に行った。同博物館を支援するボランティア活動団体(農工大OB主体)である繊維技術研究会主催の講演会に出席するためだ。

同研究会は活発に活動しており、この日のテーマは埼玉県豊岡町(現入間市)に興り、入間郡から全国へと工場展開した地場の製糸会社「石川組製糸」の活動の推移をたどるとともに、一族・企業とキリスト教との関係、家憲・家訓に基づく社会貢献について、「石川家の人々」を読む会会長/入間市の文化遺産をいかす会副会長の染井佳夫氏が講演した。

日本の近代化は、「富国強兵・殖産興業」のため、茶などの農産物を売り、その後は生糸を売って、軍艦や大砲を買う形で進められた。

 

 

蚕の繭

蚕の繭(東京農工大科学博物館)

 

生糸の標本(同上)

生糸の標本(同上)

 

昔懐かしいシンガーミシン

昔懐かしいシンガーミシン

 

日本の製糸産業をけん引した「ニッサンHR-Ⅱ型自動繰糸機」(同上)

日本の製糸産業をけん引した「ニッサンHR-Ⅱ型自動繰糸機」(同上)

 

科学博物館の正面玄関

科学博物館の正面玄関

暖冬の雪

カテゴリー: 東京日誌Ⅲ

2016/01/18  07:46


 

朝方にはみぞれに変わり、一部は溶けてしまった

朝方にはみぞれに変わり、一部は溶けてしまった

 

白銀の世界に既に活動の印が

白銀の世界に既に活動の印が

 

今年は暖冬だと油断していたら、雪が降った。10センチは積もった。朝になると、雪がみぞれに変わり、溶け始めた。それでも、雪かきをしないと自然には溶けない量だ。

暖冬なら暖冬で、一切雪は降らないものだとつい思い込んでいた。車のタイヤもスタッドレスに変えていない。そのまま3月になってくれるのではないかと甘い期待を抱いていた。やはり、冬である。

元同僚

カテゴリー: 酒/酒場/居酒屋

2016/01/15  23:28


 

宴会コースのパンフレット

鍛冶屋文蔵(有楽町店)の宴会

 

お誘いの声が掛かったら、基本的に受けることにしている。断るのは簡単だが、断れば、大体そこで縁が切れることになるからだ。さほど気が乗らなくても、少しお金が掛かっても、迷ったら行くことにしている。

難しいのは元会社関係の集まりだ。日本のサラリーマンの人生は会社人生だが、40年近くも勤め、やっと縁が切れたのに、OBになってからもまた会社関係の人間と付き合うのはいかがなものか、とずっと思っていた。会社時代の上下関係を引きずるのは願い下げにしたいからだ。だから会社のOB会にも加入していない。

しかし、この頃、そんなにかたくなになる必要もないのではないか、と思うようになってきた。この日、久しぶりに、昔、所属は違ったものの、マーケット系ニュースサービスへの取り組みで一緒に仕事をした元同僚と話をして、そう感じた。

一緒に仕事をしたいろんな局面で、「あなたはあのとき、こんなことを言った。そのとき私はこう思った」、「あの局面で私はこういうふうに考えていた」など、今になって聞くことのできる話もあった。人に対する評価も、会社との利害関係がなくなってから冷静に下せることもある。

会社生活が続いている中では、自分にいつか定年が訪れることには実感が湧かない。いろんな局面での自分の発言や行動はそれなりに判断や確信に基づくものではあるものの、その時点でのもので、それが本当に最善だったかどうかは分からない。

大体が「その時点ではベストだった」なのかもしれないが、10年も20年もたってみると、「もっと別の判断があって良かった」と思うものだ。今さらながらだが、そうした思いにとらわれる。

人生にイフはない。終わったことだ。しかし、当時の自分が置かれた状況や自分がとった行動、何気なくした発言などの一片を思い出すのは大体がその時に一緒の空気を吸っていた仕事仲間だ。自分がその時を生きていたことを明確に思い出せるのは、自分というよりも、一緒にいた仲間だ。

悲しいかな、一緒にいた時間は妻よりも仕事仲間のほうが長い。会社にいた時間のほうが確実に長い。そんな貴重な時間を共にした仕事仲間との甘い語らいを拒否するのは何とももったいない。

今頃になって、そんなことを感じている。

新「3本の矢」はアベノミクスの方向転換

カテゴリー: 会見メモ

2016/01/13  21:43


 

今年の経済見通しを語る早川英男氏(日本記者クラブ)

今年の経済見通しを語る早川英男氏(日本記者クラブ)

 

テーマ:2016年経済見通し:転機を迎えたアベノミクス
ゲスト:早川英男(富士通総研・経済研究所エグゼクティブフェロー=元日銀調査統計局長)
2016年1月13日@日本記者クラブ

 

■アベノミクスと異次元緩和(QQE)

1.大胆な金融政策
2.機動的な財政政策
3.民間投資を喚起する成長戦略

■アベノミクスの成果と誤算

・アベノミクス始動の前後から大幅な円安・株高が進んだ。沈滞していた国民の心理を明るくする効果を持った。
・消費者物価は13年半ばから前年比プラス基調で推移。「物価の持続的な下落」という意味でのデフレからは脱却。ただ「2年で2%」の約束は未達成
・リフレ派の主張は「日本経済の長期低迷はデフレのせい」だったが、デフレが終わっても、経済成長率が高まった事実はない。
・最大の誤算は、大幅な円安にもかかわらず実質輸出がほとんど増えなかったこと。

■人手不足と「成長天井」の低下

・アベノミクス始動から1年半、14年半ばに失業率は3.5%程度まで下がり完全雇用が実現。日本は「人手不足時代」に入った。ただし、この間の経済成長はわずか。完全雇用達成は、アベノミクスの成果というより、高齢化に伴う労働供給減少の結果(団塊世代完全退職の影響)。

・労働供給の減少と生産性の鈍化で日本経済の「成長天井」(潜在成長率)が低下。低成長にもかかわらず需給ギャップはほぼ解消した。

■15年度経済の期待と現実

・15年度の日本経済は、消費増税の「反動の反動」と原油価格急落による交易条件改善で、一時2%に近い高成長が期待されていたが、足元では1%程度との見方が支配的。

・QQE開始後の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)上昇率をみると、13年度は民間予想を上回って上昇したが、油価急落の影響もあって14、15年度は下振れが目立つ。もっとも、物価の基調は見掛けよりもしっかりしており、油価が落ち着けば、物価上昇率は徐々に高まっていく可能性。

■景気の足元

・家計部門=個人消費の伸び悩みは、基本的には①企業収益の割に賃上げが少なく②円安で物価が上がって、実質賃金が伸びていないため。

・企業部門=円安効果に原油安に伴う交易条件の好転も加わって、企業収益は極めて好調(過去最高水準)。その割に設備投資の伸びは鈍い。

・それでも回復基調は続く=15年度の景気は期待外れだったが、これは景気の後退を意味するものではない。企業収益は過去最高、労働市場は完全雇用である以上、内需が自律的に悪化する理由はない。原油安で実質賃金がプラスになり、設備投資計画が今後一部は実行されると考えれば、下期の内需は徐々に持ち直しが期待できる。

■16年度の経済展望

・景気=15年度後半に景気は持ち直しに転じた後、16年度も緩やかな回復基調を維持するとみられる。ただ、1.5%前後を見込むのは過大な期待ではないか?
・物価=コアCPIの前年比は足元ゼロ近傍だが、原油安のマイナス寄与が縮小するにつれて、徐々に伸びを高めていく見通し。ただし、物価の持続的上昇の最大のネックは賃金上昇の鈍さ。よって上昇率は1%がせいぜいではないか。

・米国経済=米国経済は着実に回復しており、昨年末にはリーマン・ショック後7年近く続いたゼロ金利の解除が実施された。FRBは今後も1%程度の利上げを想定している。

・欧州経済=ギリシャのユーロ圏離脱危機も乗り越えて穏やかな回復軌道にあるが、南北格差が依然大きいほか、中東からの大量の移民流入など多くの困難を抱えている。

・中国経済=ルイスの転換点を越えて基調的成長率が低下。消費主導の安定的な中成長への転換に向けて多くの課題を抱える。

・その他新興国=全般的に景気は減速傾向。為替相場の急落に見舞われる国も少なくない。3~4年前までの新興国経済の好調は、①中国の高成長②米国の金融緩和―に支えられたものだった。現在は、この2つの条件が変化しつつある。

■異次元緩和の行き詰まり

・昨年10月末の金融政策決定会合で、日銀は景気・物価見通しを下方修正しつつ、追加の金融緩和は見送った。景気回復の基調自体は損なわれていない上、物価の基調もしっかりしているというのが表向きの理由だったが、本音は、①円安効果に対する懐疑があるほか、政府もさらなる円安を望んでいない②緩和手段の弾薬切れが近い―こと。12月にはQQEの「補完措置」を実施した。

・2%インフレの達成時期を「2016年度後半ごろ」(QQE開始から約4年)に先送りしたが、実現の可能性は低い。異次元緩和はもともと短期決戦の陣立てだった。長期戦が必至となった今、持久可能な政策の枠組みが必要。

・しばらく先とはみられるが、2%インフレが実現し、日銀が国債の大量買い入れを終了すれば、長期金利は大幅に上昇する。長期金利が大幅に上がれば、金融機関、とりわけ地銀や信用金庫が大きな評価損を蒙る。巨額の長期国債を抱え込んだ日銀自身の損失も莫大。

■財政赤字のリスク

・財政破綻のリスクはまだ見えないが、問題は2%のインフレ目標が達成された時。日銀の国債大量買い入れが終わり、長期金利が上昇すると、公債残高/名目GDP比率が200%を超える日本では財政への負担は極めて重い。

・14年12月の総選挙前に安倍首相は、20年度の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化方針の堅持を約束した。15年の「骨太の方針」は一応約束を守ったが、実際には楽観的な成長頼みの計画だった。

・財政赤字拡大の主因が社会保障支出にあることは明白。早急に社会保障改革を進める必要がある。日本の財政が本当に苦しくなるのは20年代半ばから。団塊世代がさらに高齢化することが医療・介護費用の急増が予想されている。

■転機に立つアベノミクス

・安倍首相が昨年9月に「アベノミクス第2ステージ」として打ち出した「新3本の矢」は①希望を生み出す強い経済(20年頃に名目GDP600兆円を達成)②夢を紡ぐ子育て支援(20年代半ばに出生率1.8を実現)③安心につながる社会保障(20年代初頭に介護離職ゼロを実現)―。

・旧「3本の矢」の総括が済んでいないのに、なぜ今「新3本の矢」なのか?いずれも的(目標)であって、矢(手段)がない。旧「3本の矢」はデフレ脱却に向けて政策を総動員するものだったが、新「3本の矢」には体系性がない。

・掲げた目標はいずれも実現性に乏しい。とりわけ、20年代初頭は団塊世代の後期高齢者入りで介護離職が急増する恐れがある。政府は施設介護⇒在宅介護を進めてきたが、施設介護重視に転換するなら、巨額の財政負担が必要になる。

・従来のアベノミクスは典型的なトリクルダウン戦略だった。だが、企業は最高益でも賃上げもせず、設備投資にも消極的。官邸は不満を募らせている。安保法案強行による内閣支持率低下を受け、アベノミクスは方向転換を求められていた。新「3本の矢」は家計重視を鮮明にしたアベノミクスの方向転換。

・出生率1.8と介護離職ゼロは実現手段は乏しく「努力目標」。1億総活躍のスローガン的位置づけか。一方、名目GDP600兆円は事実上名目3%成長と同義。名目3%成長が実現してもPBは黒字化しないのだから、これは最低限の「必達目標」。金融緩和だけで経済再生は実現しないことが分かった以上、旧「第3の矢」である成長戦略(TPP活用など)が重要だ。

■ぬるま湯続く日本経済

・日本経済の現状は、「ぬるま湯」状態。経済成長は0%台が定着(16年度は1%台でも、消費増税後のは17年度はゼロ成長との見方が一般的)。それでも企業収益は過去最高、労働市場は完全雇用。強い不満を感じる者は誰もいない。

・2%インフレに達しないため、日銀の国債大量購入が続く⇒日本経済の最大の弱点である財政赤字も、当面火を噴くことはない。

・しかし、ぬるま湯に安住すれば、「ゆでガエル」になるリスクがある。

➢新「3本の矢」にはバラマキへの懸念。異次元緩和に安住して潜在成長力の強化や財政健全化を怠れば、いずれは財政破綻が避けられない。

➢企業の史上最高益は、円安・原油安の下駄を履いた結果。日本企業の競争力はむしろ衰えているのではないか?⇒10年代に入ってAL、 LoT、フィンテック、シェアリング・エコノミーなど世界的なイノベーションの波が再来しているが、日本企業の影は薄い。

➢労組が賃上げを要求しないのも、10年後、20年後の自社の将来に不安を感じているからなのか?