「君のためなら千回でも」

 2007年アメリカ映画「君のためなら千回でも」(The Kite Runner)。パルシネマしんこうえん。アフガニスタンの生活を舞台にした政治映画である。原作は全米で300万部を超える大ベストセラー小説。主人公はアフガンに住むアミールとハッサンの2人。

 この映画の最大の道具は凧だ。アフガニスタンで一般の住民に最も親しまれている娯楽的競技は農村部では闘鶏であるのに対し、都市部では凧揚げだそうである。単に凧を揚げるのではなく、相手の凧糸を切り、墜落させることを競い合う。その凧揚げの空中戦に勝利することは大きな名誉を勝ち得ることを意味する。

 凧揚げは極めて高度な技術と熟練を必要とする。凧を揚げる役割の者と凧糸を巻き取る役割の者がペアで凧揚げに臨む。それにもう1人、重要な存在なのが、糸を切られ行方も定かでない凧を追いかけ、見つけ出す役割を担う者(カイト・ランナー)である。カイト・ランナーも熟練と勘が要求される。アミールとハッサンはこの凧揚げのパートナーだ。

 アミールは裕福なパシュツゥーン人(アフガン人ともいう)家庭の息子なのに対し、ハッサンはその使用人の子どもで、しかも下層階級のハザーラ人に属する。ハザーラ人はパシュツゥーン人に抑圧された歴史を持つ。タリバン勢力の中心はパシュツゥーン人だった。

 パシュツゥーン人がイスラム教スンニ派なのに対し、ハザーラ人の多くは同じイスラム教でもシーア派を信奉しているという。アフガンは人種対立と宗教対立を抱える複雑な国だ。難しい国である。
 

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