アース・ビジョン第17回地球環境映像祭

①北極大変動-氷の海から巨大資源が現れた-(日本/2008年/監督:柴崎壮/49分)

 柴崎監督は実はNHKのディレクター。この作品もNHKスペシャルとして放映された『北極大変動』シリーズの2回目。小規模で手作り的な作品がほとんどの中で、巨大メディアが突然出てきたことに違和感を覚えたのは確か。北極圏開発の光と影を追った作品。

 地球温暖化による海氷面積の縮小がエネルギーを求める人類の欲望に火を付けた。北極海の海底に眠る莫大な量の地下資源をめぐる激しい開発競争の開幕がそれである。舞台は北極圏初となる本格的なノルウェーの海底ガス田。温暖化の影響で氷が溶けるのを好機に、欲望達成のために資源開発に邁進する人間。これは英知か愚挙か。

 「北極海は今やゴールドラッシュ。人間は企業利益のために資源開発をやっているのではなく、資源を求める市場があるからやっている」(柴崎監督)。これが人間の現実の姿だ。欲望が消滅すれば、それは人間ではない。恐らく、滅亡するまで欲望を追求するのが人間ではないか。

②鉄を喰らう者たち(バングラデシュ/2007年/監督:シャヒーン・ディル・リアズ/85分)

 「本当に飢えていたら、人は何だって食べられる。たとえ、それが鉄であっても」。バングラ南部チッタゴンの船舶解体現場の悲惨な搾取と過酷な肉体労働を映し出した作品。こんな現場が地球上にあることを知って愕然とした。グローバル経済に組み込まれた途上国の実態がよく分かる。

③シード・ハンター(オーストラリア/2008年/監督:サリー・イングルトン/53分)

 今や人類にとって最も重要なのは石油でもなく、金でもなく、地球温暖化の影響を耐え抜く植物遺伝子。とりわけ干ばつに強い耐性を持つひよこ豆の原種を求めて中央アジア・タジキスタンの山奥に分け入る種子業界のインディー・ジョーンズ、ケン・スストリート博士に同行取材した映像。面白い。

 同じ表現力でも映像の力は強い。インパクトが強烈だ。地球環境の問題を映像を通じて発信するのが環境映像祭。年1回だが、既に17回目を迎える。17年前の第1回は確か銀座ガスホールで開催されたように思う。

 われわれ人間の住んでいる地球。この地球が環境の変化に苦しんでいる。その地球の姿をさまざまな面から切り取って、映像化したのが映画祭に出展された作品である。3日間の映像祭の中日の7日、結構重い3つの作品を観た。東京都新宿区・四谷区民ホール。

 いずれの作品も考えさせられるものばかりだ。上映後、短時間ながら作品を作った監督のトークがあった。監督の問題意識を知ることができて面白かった。

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